- /
- LIFE
気まずいビジネスシーンをスカっと“換気”する話し方 Vol.3<言い換えるテクニック>

現代のビジネスパーソンにとって、コミュニケーション力は「生き抜くための武器」。その切れ味が試されるのが「気まずい瞬間」です。
謝る、断る、会話が盛り上がらない…。気が重くなるシチュエーションこそ腕の見せどころ。ポジティブなコミュニケーションのコツをまとめた著書が人気の放送作家・PRコンサルタントの野呂エイシロウさんに、どんよりした空気をスカっと“換気”し、その後の仕事をスムーズに進めるポイントを聞く、最終回。何事も自分事に置き換えることで、“個の時代”を生き抜く力を身につけましょう。
ポストが赤いのは、誰のせい?
野呂さんは以前、お世話になっていた方に、こんなことを言われたことがあるそうです。
「ポストが赤いことすら、自分のせいだと思え」
表面的にはとても理不尽に聞こえますが、野呂さんにとっては深い意味を持つ言葉だといいます。「たとえ自分に責任のないことでも、自分の周りに起きたことはなんでも自分のせいだと思って向き合え、というアドバイスなんです。特にこの言葉が効いてくるのが、謝罪する時や、申し出を断る時。マイナスの印象を与える話は、つい自分以外の“何か”や“誰か”のせいにして伝えがちです。でもそれは、一番よくない。言い訳にしか聞こえませんから」
責任がなくても「私に非がある」と言い換える
たとえば、「取引先からビジネスの提案を受け、上司に報告したが、却下された」というシチュエーションを考えてみましょう。
「申し訳ありません。私は推したのですが、上司がどうしてもOKをくれなくて…」
そんなふうに言いたくなりますよね。しかし野呂さん曰く「この言い方はダメ」。「僕がそう言われたら、『あなたの説得力が足りなかったからじゃない?』と思ってしまいます。さらに、『提案が上司の考えとズレていた=取引先側に非がある』と取られてしまう可能性も」。取引先との関係をこの先も良好に保つには、避けたい表現だと言います。
では、どんな伝え方をすればいいのでしょう。野呂さん流の伝え方は、自分が責任を感じていることを示すこんな表現です。
「私のコミュニケーション力不足で、上司を説得できませんでした」
「私の力不足で、上司が何を求めているのかを、貴社にきちんと伝えきれておりませんでした」
「たとえ自分には責任がないと思っても、自分に非があるように言い換えます。プライドや防衛本能が邪魔をするかもしれませんが、それでも自分のせいだと頭を下げる。そう言われれば、提案を断られた取引先も『いや、そんなことないですよ。また何か考えましょう』と、未来の話をしやすいと思うんです」(野呂さん)
第2回で紹介した「自分の立場を下に置いて相手を立てる」態度も、この場面で空気を換えることに役立ちます。自分たちの提案の出来が良くなかったからではなく、相手側に責任があったのだと思えば、取引先の担当者は気が楽ですよね。そしてこの「自分に非があるように言い換える」テクニックは、ほかのシチュエーションでも効果を発揮します。たとえば、気まずい思いをしがちな他人の陰口への対処もそのひとつ。陰口が始まると、野呂さんは、
「え、そうですか? 僕、鈍感だから全然気がつきませんでした」
とかわすのだそう。「そうですね」とも「そんなことないですよ」とも言いにくい誰かの陰口も、自分に「鈍感」という非があることにしてスルーする。これもひとつのコミュニケーションの技と言えます。
すべての出来事を「自分事」にする
自分では変えられないことも、自分に責任があると思う。それは一見、理不尽なようですが、身の周りの出来事をすべて「自分事」にする、という考え方に繋がります。
野呂さんは、「仕事でトラブルが起きた時に、会社や上司のせいにしたくなるのは、“御社と弊社、つまり組織と組織の取引”としか思っていないから。自分と、先方の担当者の“個と個の付き合い”だと考えて、どうこの関係を続けていくかに集中すれば、他人のせいにはできなくなるはずです。組織と個人はイコールではないのです」と話します。
以前、Aというテレビ局に番組の企画を提案した際、残念ながら採用されなかったという野呂さん。でもそこで、A局の担当者が「うちの局では難しかったけど、B局なら絶対に面白がってくれる」と、別のテレビ局の担当者を紹介してくれたのだそう。「その後、実際にB局で番組になりました。A局の担当者は『野呂の企画が実現して、俺も嬉しいよ』と言ってくれた。そういうことは、よくあるんですよ」
A局の担当者は、企画が通らない理由を上司や会社のせいにもできた場面ですが、そうしなかったのは、「野呂さんの企画を実現させること」を自分事として考えていたからでしょう。
「SNSが社会に浸透した現代は、個人の名前で勝負する時代。人間は弱いから、都合の悪いことは人のせいにしたくなりますが、“個の時代”で生き残っていくためには、どんなことも自分事として考える力が欠かせないと思います」。野呂さんは、そう力強く話してくれました。
コミュニケーション力は現代を生き抜く武器
「人生には何が起きるか分かりません。だから僕は基本的に人に好かれたい。好かれて、何かあった時、周りに『助けてあげよう』と思われた方がいい」と笑う、野呂さん。
「現代におけるコミュニケーションは、生きていくための武器なんです。昔の剣術や弓矢みたいなもの。真剣にやらないと、生き残れませんよ」
ミスをして謝罪しなければならない時や、相手の申し出を断る時。重苦しい空気に気後れして、次の言葉を発する勇気が出ない…。そんな時にこそ、コミュニケーション力の “切れ味”が試されます。ポストが赤いことすら自分のせいだと思えるぐらい、何事も自分事として捉え、場の空気を換える態度や話し方を身につける。野呂さん流のコミュニケーション術は、気まずいシチュエーションはもちろん、個の力が求められるこれからの時代で道を切り開いていく時にも、頼もしい武器になってくれるはずです。
編集:株式会社エアリーライム ライター:丸山こずえ
睡眠管理をして、健康習慣を身につけよう!

記録した睡眠時間などを含む習慣・行動は自動でスコアリングされ、ブレインパフォーマンスによい健康習慣を持続しているかが、かんたんに確認できます。
FEEDBACK 評価 / コメントする
- 記事および画像の無断転載・無断使用は禁止しています。
RECOMMEND おすすめ記事
PICK UP ピックアップ
