
世の中は一気に年末ムード。特別なことをしなくても、「新年を迎える」と思うと心が躍りますよね。お正月といえば「おせち料理」。しかし、里帰りをしない一人暮らしの人にとっては縁遠いもの……と思いがちですが、実はそうではないようです。(※こちらの記事は2019年末に公開されたものです)
今回はライターのコヤナギユウさんが、たった30分で3品のおせち料理作りに挑戦しました。忙しくて時間がない人、料理が苦手な人でも作れる、簡単・時短なおせち料理のレシピと段取りを紹介します。
はじめまして、フリーライターのコヤナギユウです。取材や打ち合わせなど、日々やることに追われてぐったりしています。お正月くらい実家でゆっくりしたいけれど、予定が詰まっていて帰る余裕がないしなぁ。せめて、田舎の母の手料理を食べてホッとしたい…。
あ! 今いいことを思いつきました。
母におせち料理のレシピを送ってもらい、それを自分で作ってみる年越しプランです。私も母似でなかなかの面倒くさがり。簡単、早い、正月っぽい。そんなお手軽おせち料理の完成を目指します。
母のレシピを見て、調理工程の段取りを組む
電話でお願いしたところ、すぐに母からレシピが書かれた手紙が届きました。季節の挨拶などの私信はなし。3品のレシピしか書かれていない潔さから、母の「面倒くさがり」な性格が見て取れます。
母のレシピを何度もチェックしてみたところ、これ……効率的にやれば、30分で3品作れるのでは?
というわけで、どんな順番で調理すれば、面倒な調理時間を圧縮して最短で完成するのか、多忙なビジネスパーソン(実際のところは締め切りに追われるライター)として、料理の段取りを整理します。料理工程と所要時間をパズルのように組み直していると、だんだんと脳のトレーニングになる気がしてきました。
30分でおせち3品を作るクッキングの手順
今回は、松前漬け、大根なます、クワイの煮物の3品を作ります。材料は以下の通りです。
▼松前漬け
材料 ニンジン(1/2本)、昆布(3切れ程度)、スルメ(小2杯)
調味料 しょうゆ 50cc、みりん 50cc、酒 50cc、砂糖 ひとつまみ、水 50cc、出汁(出汁パック1袋)
▼大根なます
材料 大根(1/4本)、ニンジン(1/2本)
調味料 酢 60cc、砂糖 大さじ2、塩 ひとつまみ
▼クワイの煮物
材料 クワイ
調味料 しょうゆ 50cc、みりん 50cc、酒 50cc、砂糖 大さじ2、水 50cc、出汁(出汁パック1袋)
母のレシピに「分量」という概念がないため、量は私の独断です。和食の調味料は、だいたい1:1:1でどうにかなります。
さぁ! 「同じ手順で調理すれば、30分でおせち3品作れるクッキング」の開始です!
段取り1:[松前漬け]調味料を沸騰させる
包丁を持つ前に、「松前漬け」用の調味料を鍋に入れます。しょうゆ、みりん、酒、水はすべてほぼ同量で50cc程度。砂糖ひとつまみと出汁パック1袋も入れて、火に掛けます。
段取り2:[松前漬け]ニンジン・昆布・スルメは千切り
調味料を煮立てている間に食材を切ります。待ち時間を計算して何に取りかかるかは、まさに段取り力の見せどころですね。
面倒なニンジンの千切りは、スライスしたらトランプのように重ねて並べて、上から押しつけながら刻んでいくと、一気に切ることができて楽。多少太いニンジンがいても目をつぶりましょう。どうせ食べるのは自分ですから。
また本来、昆布、スルメは水に戻してからカットしますが、今回は乾いたままキッチンばさみで細切りにして時短を狙います。多少太くても…(以下同文!)
作業中に調味料が煮立ったら、火を止めて出汁パックを取り出しましょう。
段取り3:[松前漬け]鍋に具材を入れて一煮立ち
本来、合わせ調味料とともに一晩寝かせる松前漬けですが、今回は時短レシピなので食材を一煮立ちさせ、食材に火を入れて柔らかくします。煮立ったら火を止めて、粗熱が取れるまで放置。
段取り4:[大根なます]食材を切り、塩もみをする
松前漬けを冷ましている間に、なますの大根とニンジンを切りましょう。先ほどと同じく千切りです。あ、そうか……松前漬けのときにまとめて切っちゃえば良かったのか。次回から改善の余地があるのも、段取りクッキングの醍醐味ですね。
大根とニンジンは色が移らないよう、別々に塩もみをします。
塩もみは塩で水分を抜いて食材を柔らかくするのが目的なので、味は気にせず大さじ1くらい入れてまんべんなく揉み込みます。
慣れないレシピに戸惑っていたのですが、指先を使っていくうちに頭がクリアになって、だんだん周りが見えるようになってきました。集中力が追いついてきたような気がします。
段取り5:[松前漬け]保存袋に移し替えて味を馴染ませる(ほぼ完成)
松前漬けの粗熱が取れたら、保存袋へ入れ替えてほぼ完成。空気を抜いて保存すれば、落とし蓋いらずで味を染み込ませることができます。洗い物を減らすのも、時短調理の大切なテクニックです。
段取り6:[クワイの煮物]クワイの皮むき
続いては、お正月の時くらいしか食べないけれど、大好物のクワイの皮をむきます。母のレシピにしては珍しく、丁寧な図解が書いてあります。厳粛な気持ちで茎を切り落としましょう。
お尻もまっすぐに切り落として、クワイが立つようにします。
段取り7:[クワイの煮物]調味料を鍋に入れてクワイを煮る(ほぼ完成)
鍋に調味料のしょうゆ、砂糖、酒、みりん、水と出汁パックを入れます。分量は砂糖大さじ2、その他の調味料は50ccくらい。分量の目安として、「卵1つ=およそ50g=50cc」と覚えておくと便利です。50ccは卵1つ分くらいの大きさなので、これを1つの基準値として活用しましょう。
クワイを立てて並べ、火に掛けます。水分が飛びすぎないようにフタをしましょう。
段取り8:[大根なます]調味料を鍋に入れて酸味を調節
大根なますの調味料、酢、砂糖、塩を合わせて鍋に入れます。母のレシピにはなかったのですが、松前漬けで余った昆布も放り込んでみました。お酢は60cc、砂糖は大さじ2。塩はひとつまみ程度でOKです。そのままだと酸っぱすぎるので、熱を入れて酸味を飛ばします。1分程度が私の好みですね。
隣のクワイの鍋が一煮立ちしていたので、出汁パックを取り出します。弱火であと5分ほど煮れば、クワイにも火が通るので完成です。
段取り9:[大根なます]食材を水洗いして絞る
塩もみでしんなりしたニンジンと大根を洗い、絞ります。力一杯ギューッと握って水を切るのがポイントです。
大根もいい感じにしんなりしました。食材と調味料をすべて和えたらもう完成です! あとはクワイに火が通るのを待つばかり、というわけで……プシュッ!
ゴク、ゴク、ゴク。
ップハー! もうこれで、おせち料理ができたも同然やー!
材料が足りない! ピンチを救った心の余裕
料理は「楽しく」が基本。ましてや自分のためのクッキングですから、ビール片手にご機嫌でやるくらいでちょうどいいのです。事前に買ってきたおつまみと余ったスルメもあるので万全です。
クワイに火が通っているかをチェックしつつ、念のためにレシピを復習。
……ん?
ざざざざ、材料に書いていない食材の「数の子」が、松前漬けの作る手順の最後に書いてある!
レシピの内容がシンプルゆえに、想像つきすぎてちゃんと見てなかったという凡ミスです。すでに「ほぼ完成」とし、保存袋の中で味をしみこませている松前漬けに、「数の子」が入っていません。
材料として考えていなかった数の子。
しかし…。
実は、ここに…。
おつまみとして食べようと思って、今回の企画とは無関係に買ってあったのです! ピンチを救ったのは、いつも楽しく過ごそうとする心の余裕でした。助かりました!
はたして、30分で作ったおせち料理の味は?
段取り10:[大根なます]調味料と食材を和える
粗熱が取れた調味料と、水を切った食材を和えたら、大根なますが完成!
段取り11:[松前漬け]数の子をほぐして加える(今度こそ完成)
おつまみの数の子をほぐして、松前漬けに加えます。数の子はもともと下味がついているので軽く揉めば良し。もちろん一晩寝かせた方が、全体の味が落ち着いて美味しくなります。
もみもみ。簡単に混ざればいいでしょう。松前漬けも完成です!クワイも火が通り、無事にこちらも完成。あっという間にできました!
ちなみに、おせち料理にはそれぞれ験担ぎが託されています。今回のレシピでは、以下のとおり。
松前漬け……北海道の郷土料理。数の子は子孫繁栄、昆布は「喜ぶ」、スルメはお金を「お足」と言い換えられ、足が多くて縁起が良い。
大根なます……紅白の水引を連想するので縁起が良い。
クワイの煮物……球体から伸びた茎が「芽が出る」を意味するゲン担ぎに。
- 諸説あります
味の方も、まったく問題なし。むしろ美味しくできました。
3品を時間の無駄なく作るために、マルチタスクで段取りをこなしていきました。キッチンに立っていたのは予定どおりたったの30分。短時間の集中がいい具合に頭の体操になり、いまならどんな料理でも作れる気がしました。自然と気持ちも前向きになって、清々しい気持ちで新年を迎えられそうです。
面倒な気分は最初だけ。新年をフレッシュな気持ちで迎える30分の簡単おせち料理作り、ぜひ挑戦してみてください!
取材・文:コヤナギユウ 編集:水上歩美(ノオト) 撮影:宗形裕子
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