歩きイヤホンはダメ? 体だけでなく頭も使う「脳トレ散歩」5つのテクニック

「健康のために、もっと体を動かさなければ」と思っている人は多いのではないでしょうか。しかし、ジョギングや激しい運動はハードルが高いですよね。そもそも運動は、継続的に行わなければ意味がありません。その点、散歩なら準備も必要なく、気軽に始められて続けやすいでしょう。

「散歩は外からの刺激により、脳に良い効果をもたらします」

そう話すのは、脳科学や運動科学・生理学に基づいた身体機能改善を提案し、『疲れない体を脳からつくる ボディハック』(イースト・プレス)などの著書もあるパーソナルトレーナーの鈴木孝佳さん。

散歩を楽しみつつ脳もトレーニングできる方法はあるのでしょうか。体を動かしながら頭も使う「脳トレ散歩」のテクニックについて、鈴木さんに聞きました。

脳が危険を察知できなくなる? 散歩中のイヤホンがNGな理由

――イヤホンを付け、好きな音楽を聴きながら散歩している人は多いかと思います。音楽を聴きながら歩くのは、マルチタスクの要領で脳トレに良さそうな気がしますが、いかがでしょうか?

いえ、イヤホンを付けながら散歩するのはなるべく避けたほうがいいでしょう。なぜなら、脳トレ以前の問題として、脳が危険を察知できず無意識に体が緊張してしまうからです。

私たちは歩くとき、外からの情報を絶えず入手し、危険が迫っていないかどうかチェックしなければなりません。そのとき、視覚情報に加えて「音」はかなり大きなヒントになります。自分では気づかないかもしれませんが、外からの音を遮断すると脳が身の回りの危険に気づきにくくなり、体の緊張度が上がってしまうのです。

イヤホン装着イメージ

――「歩きスマホは危険」というのは認識していましたが、音楽を聴きながら散歩するのもダメというのは意外ですね。

たまに、イヤホンで音楽を聴きながらスマホを見て歩いている人を見かけますが、危険であることはもちろん、体にも悪い歩き方です。体が緊張するだけでなく、常に足元を見る形になり、必然的に猫背になってしまいます。

散歩中は、目と耳の使い方を変えることが大切です。なるべく遠くの景色をボヤっと見ながら、気楽に歩きましょう。公園などで木や緑をボンヤリ眺め、自然の音を聞きながら散歩してください。それだけで緊張が抜け、首や肩の動きが良くなります。

両手でキャッチボールしながら歩く? 「脳トレ散歩」5つのテクニック

散歩をする際は、なるべく遠くを見ながら、広い視野で歩いたほうがリラックスできるとのこと。ただ、「普通にボンヤリ歩くだけでは飽きてしまう」という人も多いかもしれません。では、どんな散歩が脳トレに適しているのでしょうか?

散歩しながら脳をトレーニングする方法5つを、鈴木さんに教えていただきました。 

1.木にとまっている鳥を数える

1.木にとまっている鳥を数える

現代人はテレビやスマホなど、ある一点を見続ける時間が多くなっています。それにより、体が緊張したり、肩が凝ってしまったりするのです。散歩をする際は、なるべく広い視野を持ち、目の使い方を変えることを意識してください。歩きながら目を動かしたり、数を数えたりすることで、脳を適度にトレーニングさせることができます。

たとえば公園を歩き、「鳥が木に何羽とまっているか」など、ゲーム感覚で数えてみましょう。集中して見るというより、緑の中をボンヤリ歩きながら数えるイメージです。脳トレに効果があるだけでなく、体の緊張が取れて肩こりや腰痛の改善にもつながります。

2.頭の中で100から7を引いていく

2.頭の中で100から7を引いていく

歩きながら計算すると、脳に負荷がかかります。高齢者施設などでよく使われるのは「100から7を引いていく」という手法です。

100から7を引くと93、そこから7を引くと86、さらに7を引いていき……と計算を繰り返します。歩くスピードが遅くなってしまったり、計算を間違えてしまったりすることもありますが、それは脳を使っている証拠なので、ほどよいトレーニングとなるでしょう。

3.両手で「1人キャッチボール」をしながら歩く

3.両手で「1人キャッチボール」をしながら歩く

右手と左手でポンポンとキャッチボールしながら歩きます。これは簡単なようで、意外と難しいかもしれません。なぜなら、ボールを落とさないようにしつつ、転ばないように周囲を見ながら歩かないといけないからです。歩行とキャッチボールを両立するためには、いつもより視野を広げる必要があります。2つの動作を同時に行うことで、脳のトレーニングにつながるでしょう。

ボールがなければ、小さいタオルでもかまいません。何か持っていけそうな小物を、右手と左手で交互にキャッチしながら歩いてみてください。公園など人が少ない場所を探し、両手でキャッチしながら8の字に歩くとさらに効果的です。

昨今のコロナ禍により、家の中で過ごす時間が増えていますよね。逆に考えると、遠い場所を見る機会が極端に少ない。それが続くと、だんだん視野が狭くなってしまうのです。見える範囲が狭いと、体の緊張度が上がります。歩きながらキャッチボールすることで視野が広がり、脳に刺激を与えるとともに体の緊張をほぐす効果があるでしょう。

4.音の鳴る方向や距離を想像し、答え合わせをする

4.音の鳴る方向や距離を想像し、答え合わせをする

散歩中に聞こえた音が、どの方角から、どれくらいの距離で聞こえているか頭の中で想像します。そのあと、自分の認識と合っているか位置を確かめてみましょう。

最近はオンラインでの会議や打ち合わせが増えており、イヤホンを付ける時間が長くなっている人が多いかもしれません。長時間イヤホンを付けていると、音の聞こえ方がおかしくなったり、さらには体の不調につながったりする可能性があります。

というのも、人間は目や耳から得た情報を脳で統合し、どこにどういう危険があるか認識しているもの。その認識がズレてしまうと、脳が外の世界を正しく理解できず、ギャップが生まれてしまうのです。耳本来の使い方をするためにも、外から聞こえる音を脳で自然に認知することが大事です。

5.散歩のルートをときどき変える

5.散歩のルートをときどき変える

同じ道を歩いていると、脳に対する刺激が減ってしまいます。なるべく新しい道を歩くようにすれば、刺激量が大きくなり、脳トレに効果があるでしょう。とはいえ、家の近所では歩く道が限られるかもしれません。散歩ルートを数パターン作って、順番に変えてみるのもいいでしょう。

たとえ住宅街であっても、通ったことのない道を歩けば、脳に刺激を与えることができます。公園なら、「いつもは右回りだけど、左回りに歩いてみる」といった工夫でアレンジしてみてください。

寝起きは水分補給をしてから
「脳トレ散歩」を朝に行うときの注意点

――「朝活」の一環で、早朝に散歩し体と脳を動かしてから仕事をする人もいるかと思います。「脳トレ散歩」をする場合、どういう時間帯に歩くのがよいでしょうか?

基本的には、日中の時間帯が良いと思います。寝る前と朝起きてすぐの時間は、なるべく避けたほうがいいですね。寝る前の散歩は体も脳も活発にしてしまうので、睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。

朝起きてすぐのタイミングは、体が脱水している状態なので注意が必要です。最低でも250ミリリットルぐらいの水分を取ってから散歩してください。まったく水分補給せずに運動すると、倒れてしまう可能性もあります。ただ、一気に飲むと体が吸収できないので、250ミリリットル以上を30分~1時間かけて摂取するのが理想です。

――早朝に散歩するのは脳に良さそうな気がしますが、起きてすぐの時間は避けたほうがいいのですね。

はい。さらに寝起きは、背骨の中でクッションの役割を果たしている「椎間板」の水分量が多くなっています。多すぎるがゆえに、急に運動すると負荷がかかってしまうのです。散歩ぐらいならそれほど問題にはなりませんが、ランニングとなると、体への衝撃が大きくなります。朝は起きてから水分を取り、強度の高い運動は1~2時間経ったあとにしたほうがいいでしょう。

脳トレを意識して散歩するのは良いことですが、体調を崩してしまっては意味がありません。時間帯や水分補給などに注意しつつ体を動かしましょう。

「脳トレ散歩」を朝に行うときの注意点

いつもの歩き方を見直し、体と頭に効果的な散歩を

体だけでなく頭も使う「脳トレ散歩」と、散歩する際の注意点を紹介しました。「イヤホンで音楽を聴きながら歩く」「朝起きてすぐ散歩する」といった行為が、実はあまり体に良くないという話を聞き、筆者も驚きました。

散歩で一番大切なのは、楽しみながら無理しない範囲で続けること。いつもの歩き方をあらためて見直し、体と脳に効果的な「脳トレ散歩」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • パーソナルトレーナー・鈴木孝佳さん

    パーソナルトレーナー・鈴木孝佳さん
    パーソナルトレーニングスタジオ「b{stoic(ビーストイック)」のヘッドトレーナー兼CTO。姿勢・スタイル・不調を改善する専門家として、トレーニングや食事、睡眠など健康にまつわる情報をSNSや動画配信サイトで発信している。


取材・文:村中貴士 編集:水上歩美(ノオト) 撮影:宗形裕子 モデル:大黒まりこ

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