薄着で寝るのはNG? 快眠セラピストに聞く「寝苦しい夏の睡眠術」

薄着で寝るのはNG? 快眠セラピストに聞く「寝苦しい夏の睡眠術」

ムシ暑くて寝苦しい夜が続いていますね。そんな夏によく聞くのが、「エアコンをつけっぱなしで寝ると、体に悪いのでは?」という意見。睡眠時の暑さ対策を調べるといろんな情報が出てきますが、「いったいどれが正解なのかよく分からない」と思う人もいるかもしれません。

そこで睡眠のプロ、快眠セラピストの三橋美穂さんに「寝苦しい夏の睡眠術」をお伺いしました。

快眠セラピスト・三橋美穂さんプロフィール

  • 三橋美穂さん

    寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきた。とくに枕に関しては、頭を触っただけで、その人に合う枕を見極められるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。主な著書に『眠トレ!ぐっすり眠ってすっきり目覚める66の新習慣』(三笠書房)ほか多数。https://sleepeace.com/

正しいのはどれ? やりがちな睡眠習慣を振り返ろう

まずは、「寝苦しい夏の夜にやりがちな睡眠習慣」をネットで調べてまとめてみました。

寝苦しい夏の夜にやりがちな睡眠習慣

どれも直接体温を下げたり、涼しさを感じられたりして良さそうですが、睡眠の観点で見るとどうなのでしょうか? 三橋さんに○×で回答していただきました。

寝苦しい夏の夜にやりがちな睡眠習慣_三橋さん回答

意外と多くの×がつきました。それぞれ理由を詳しく教えていただきましょう。

室温28℃を超えると危険 睡眠時のエアコンの使い方

室温28℃を超えると危険 睡眠時のエアコンの使い方

――「エアコンを止めて、扇風機を使う」は×でした。どうしてなのでしょうか?

エアコンを止めてしばらくすると、壁や天井にこもった熱(輻射熱)の影響で室温が上昇し、28℃を超える危険性があります。室温が28℃を超えると夜間熱中症のリスクが高くなるため、睡眠中も28℃以下を保つことがマストです。扇風機は、空気を循環してくれるけれど室温を下げる効果は期待できません。設定温度をうまく調節する必要はありますが、熱帯夜は基本的にエアコンをつけっぱなしで寝たほうがいいでしょう。

エアコンで体がだるくなるのは、睡眠時に冷え過ぎてしまう「寝冷え」によるものです。その場合は設定温度を高めにしたり、長袖・長ズボンのパジャマを着用したりするなど、体が温度変化を受けにくい環境を作りましょう。

――睡眠時の最適な温度はどれくらいなのでしょうか?

寝るときの温度は、「布団の中」と「部屋」で別々に考える必要があります。

布団の中の最適温度は33±1℃です。これは一年を通して変わりません。33℃と聞くと「高いな」と思うかもしれませんが、体温と比べると少し低いですよね。

真夏の寝室の温度は26~28℃が目安ですが、28℃以下でご自分が快適な温度なら、何度でも構いません。暑がり・寒がりといった体質や、使うパジャマや寝具の保温性によって快適な温度は変わるので、いろいろな組み合わせを試して、自分のベストを見つけてください。

――「寝室にエアコンがない」といった人は、どうすればいいでしょうか?

リビングのエアコンをつけて、扇風機で冷気を寝室に送ってください。または、夏の間だけエアコンがある部屋で寝てください。今は温暖化の影響で熱帯夜と夜間熱中症が増えているので、エアコンは必須です。

暑さが厳しくない日は、扇風機でも大丈夫です。ただし、風を体にあてないよう、天井や壁に向けて動かしてください。風があたり続けると、エアコン同様、体が冷えてだるくなります。微風で部屋の空気をゆるやかに循環させるといいですね。

ひんやり寝具は素材と構造をチェック! 夏に最適な寝具の選び方、使い方

ひんやり寝具は素材と構造をチェック! 夏に最適な寝具の選び方、使い方

――「氷枕で頭を冷やしながら寝る」は○でした。睡眠にどんな良い効果がありますか?

頭を冷やすと、脳の代謝を減速する作用で寝つきがよくなります。ただし、冷やしすぎるとかえって目がさえて眠れなくなるので、「少しひんやりして気持ちいい」くらいの状態にしましょう。タオルなどを巻いて温度調節することが大事です。

ちなみに氷枕を使わなくても、夏に適した枕を使えば頭を涼しく保つことができますよ。

――どのような枕が夏に適しているのでしょうか?

パイプやビーズなど、やや硬めで熱が逃げやすい素材の枕がいいでしょう。反対に、ポリエステル綿やウレタンのようなやわらかい素材の枕は頭に密着するので、夏は暑く感じるかもしれません。ただ、夏と冬で枕を変えるのは面倒ですよね。エアコンを利用するなら、枕カバーを夏用に変えるだけでも涼しさを実感できると思います。麻のカバーは、吸湿性および発散性が高いので爽やかに感じられるでしょう。

――なるほど。では、ふとんやシーツの選び方を教えてください。

冷感寝具や通気性がよいもの、熱を逃がしてくれる敷きパッドを使うと、エアコンの設定温度が高めでも快適に眠れます。よくあるのが、夫は暑がりで妻は寒がりといった、夫婦で快適に感じる温度が違うケース。暑がりの人は冷感寝具、寒がりの人は厚着と、寝具や服で差をつけるといいでしょう。

掛け布団の使い方は、服装や体質、エアコンの設定温度によって変わります。タオルケットやガーゼケット、肌掛け布団など、全体のバランスをみて選んでください。まったく何も掛けないより、少し重みがあったほうが、包まれるような感覚になり安眠度が増します。

――最近は夏用の寝具がたくさん販売されていますが、何を基準に選べばいいのでしょうか?

触るとひんやりする「接触冷感」機能があるシーツや敷きパッドは、「吸湿性があるか」「裏側がメッシュになっているか」など、素材と構造をチェックしてください。たとえば、接触冷感度が高くても中にポリエステル綿が入っていると、熱がこもりやすくなり寝ている間に暑くなります。

接触冷感の寝具は空間の温度によって感じ方が変わるので、冷房の効いたお店で触ると、どの製品もヒンヤリと感じるかもしれません。しかし、エアコンをつけない、もしくは高めの温度設定の部屋で使うと、あまり効果が感じられず、むしろ蒸れて暑くなることもあります。エアコンとの併用を前提とし、服装や体質とのバランスを考えて選ぶことが大切です。

三橋さん寝具コメント

夏でもパジャマは長袖・長ズボン 薄着はなるべく避けて

――「半袖・半ズボンなど薄着で寝る」は×でしたが、なぜでしょうか?

エアコンを使いつつ、体が冷えないよう長袖・長ズボンで保温するのがおすすめです。薄着だからといってエアコンを止めると、睡眠中に室温が上がって熱中症になるリスクが高まります。エアコンを使わず薄着で寝るのはなるべく避けたほうがいいでしょう。

ちなみに私は寒がりなので、1年じゅう長袖・長ズボンの厚着で寝ています。以前は「薄手のパジャマを着て29℃」で寝ていたんですが、レッグウォーマーや腹巻きを着用し「厚着で27℃」に変えたところ、睡眠の質が上がりました。エアコンをつけて寝ると体がだるくなる人は、ぜひ試してみてください。

一方で、「すごく暑がりなので、エアコンの設定温度を低めにした上で、半袖・半ズボンがちょうどいい」という人もいます。もしそれでぐっすり眠れるなら、問題ありません。

――体質によって服装を変える必要があるということですね。私はジャージやスウェットなど、部屋着のまま寝ることが多いのですが、それも睡眠に影響があるのでしょうか?

泳ぐときは水着、走るときはランニングウェアを着ますよね。それと同じで、寝るときはパジャマを着ることで睡眠のパフォーマンスが上がります。

パジャマの役割は「適度な保温・吸湿」と「意識の切り替え」。パジャマに着替えるのは、入眠儀式の一つでもあるんですよ。また、パジャマは生地が柔らかくゆったりしているので、肌へのストレスが少ない。寝がえりをする際、体の動きを妨げにくいので、目覚めたときに「熟睡したな」という感覚が増します。

――なるほど、そこまで考えていませんでした。では、夏用のパジャマに最適な生地はなんでしょうか?

値段が手ごろで扱いやすいのは綿ですね。ただし、綿でもいろんな織り方・編み方があり、保温性や肌触りが変わってきます。ガーゼや楊柳(ようりゅう)、サッカーなど、表面が肌に貼りつかない生地だと涼感が得られるので、夏向きです。もう少し厚手の生地のパジャマで、エアコンの温度を下げるという方法もあります。

冷たいものを飲むのはよくない? 寝る前にしていいこと・悪いこと

冷たいものを飲むのはよくない? 寝る前にしていいこと・悪いこと

――「寝る前に冷たいものを飲む」も×ですね。なぜダメなのでしょうか?

暑がりの人が少し飲むくらいは構いませんが、冷たいものを飲むと胃腸が冷えてしまいます。そうすると、体が元の温度に戻そうと反応するため、深部体温が下がりにくくなるのです。深部体温とは、胃や腸など体の内部の温度で、日中は上昇し、夜にかけて下がってくると睡眠モードになります。

「寝る前に冷たいものを飲むと、体が冷えて眠りやすくなる」と思うかもしれませんが、むしろ深部体温が下がりにくくなる作用が働くため、快眠には逆効果といえます。常温かぬるま湯がおすすめです。

――夏は湯船につからず、シャワーだけで済ませる人が多いかと思いますが、こちらも×でしたね。

シャワーだけでは、深部体温のメリハリが効きません。体の表面の血行がよくなり放熱を促すので、シャワー自体は悪くないのですが、熟睡するためには湯船につかったほうがいいでしょう。

入浴は寝る1~2時間前に、ぬるめのお湯に15分くらいつかるのがおすすめです。お湯につかることで体温が上がりますが、お風呂から出てしばらくすると体温が急激に下がり始めます。そのタイミングで眠気が強くなるので、寝つきやすくなるでしょう。

――体温を上げるという意味では、運動もありますよね? 日中は暑いので、夜にランニングする人もいるようです。

寝る直前に激しい運動をすると、深部体温が下がるまでに時間がかかり、睡眠の妨げになります。また、激しい運動によって交感神経が刺激されると、体をリラックスさせる副交感神経へスムーズに切り替えられません。強度によりますが、運動は寝る3時間前に済ませておくほうがいいですね。

ただ、軽いストレッチくらいであれば寝る直前でも構いません。寝る前にストレッチをすると、体の緊張がほぐれ、血行がよくなります。また、リラックスを促す副交感神経へと切り替わり、自然な眠りにつながるでしょう。息があがるような激しいストレッチは逆効果になってしまうので、体を楽にした状態でゆっくり呼吸しながら行ってください。

――「ミント・柑橘類など爽やかな香りのアロマをたく」は○ですね。正しい使い方を教えてください。 

ミントや柑橘類のアロマは清涼感があり、体感温度を下げる効果もあります。ただし、香りが強すぎると目が覚めてしまうこともあるので注意してください。

おすすめは、ラベンダーやゼラニウムといった「リラックス系」のアロマと、レモンやミントなど「リフレッシュ系」のアロマを混ぜて使うこと。リラックス系:リフレッシュ系=2:1の割合でブレンドすると、気持ちよく眠れるでしょう。

 

アロマイメージ

寝苦しい夜も熟睡できるよう、こまめな対策を

暑い夏は、どうしても寝苦しい夜が続いてしまうかもしれません。紹介したエアコンの使い方や寝具の選び方、生活習慣の工夫を参考にしてみてください。

しっかりした睡眠をとることは、体調管理や夏バテ予防にも効果的です。夏の暑さに負けないよう、自分に合った睡眠環境を整えましょう。


取材・文:村中貴士 編集:水上歩美(ノオト) 撮影:井上依子

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