記憶力はいまからでも上げられる? 接客のプロたちに顧客を記憶するテクニックを聞いてみた

記憶力はいまからでも上げられる? 接客のプロたちに顧客を記憶するテクニックを聞いてみた

みなさんは記憶力に自信がありますか?筆者はとにかく、人や物事を記憶するのが苦手です。学生時代のテストでは、一夜漬けをしても学校に着くころには忘れていましたし、人の顔は5回は会わなければ憶えられません。

ドラマを見ていても、3話目あたりで「あれ、この人こんな顔だったっけ……?」と混乱してしまい、内容が頭に入ってこなくなります。最近さすがに自分でもやばいと思っているのですが、一体どうすれば記憶力を上げることができるのでしょうか。

記憶力のよさそうな職業といえば?

そこでふと思いついたのが、「記憶力の良さそうな職業の方々」です。ベテランの営業マンや美容師、バーのママなど、お客さんについての細かい情報をいかに記憶できるかが仕事に直結する職業の方々。

たまにしか会う機会がないのに、以前話したことをよく憶えていて、驚かされることもしばしばです。本当に感心しますし、ちょっと不思議ですよね……。彼ら彼女らは一体、どのような方法で顧客の情報を記憶し、整理・管理しているのでしょうか。さっそく接客経験豊富な3名の方にインタビューをして、記憶力を上げるテクニックを教えてもらってきました!

相手に興味を持って、会話を深掘りすることで記憶する
〜美容師・八木香保里さん〜

プロフィール

  • 八木香保里さん

    1989年神戸市生まれ。主に芸能人や広告・映像のヘアメイクを担当、美容室エリザベス3代目技術継承者として日本髪・和装婚礼文化を継承。神戸と表参道の2拠点で美容師とヘアメイクをしている。

――さっそくですが、八木さんはお客さまのことをどうやって憶えていますか?

お客さまに最初にカルテを書いていただき、その後カウンセリングをしながら、さらに深い情報を頭に入れるようにしています。コロナが流行する前は、かなり雑談をしていましたね。

記憶するためのコツですが、『そういえば、そんなことも言ってたね』で済ませられるようなことは憶えなくてもいいんです。たとえば、ラーメンが好きなお客さまは何百人もいますよね。なので、もっと違うことを憶えておきます。

――「違うこと」とは……?

たとえば会話の中で、「大きな病気で手術をした」とか「お子さんの受験が心配で白髪が増えた」みたいな、そのお客さま特有の情報が出てきますよね。そういったことは絶対に憶えて、カルテにも書き残しておきます。

――なるほど! たしかにそれは憶えておいてもらえたら嬉しいですよね。でも、どうやってそんな話を引き出せるんでしょうか。

まず大事にしているのは、「一般的な天気の話はしない」ことですかね。私のお客さまは0歳から100歳まで本当に幅広いので、わざわざそんな話を振らなくても、「おかあさんといっしょ」から介護施設や持病までいろんな話を聞かせてもらえるんです。

だから一足飛びに、深い話からスタートします。そして、「えー!そうなんですね」で終わらせないことも大事にしています。いただいた情報を元に「じゃあ、何の曲が好き?」「どんなキャラが好き?」みたいに深掘りすることで、さらに深い話ができますし、記憶にも残りやすいんですよね。

美容師・八木香保里さん2

――なるほど! ちなみに外見は憶えないんですか?

私は美容師なので骨格で憶えることもありますが、そこまで外見はあてにしていないですね。だって顔も髪型も、結構変わりますよね。それよりも「会話の記憶」が大事。

あとは「なぜここに来てくれたのか」という理由が、記憶に残るポイントになることもありますね。昔、お客さんの女の子が、“友達以上・恋人未満”みたいな関係の男の子をお店に紹介してくれたことがあったんです。

――ほう!(身を乗り出す)

リクエストされたわけじゃないんですが、男の子の髪を切るときに、紹介者の女の子好みのヘアスタイルを提案してみたんです。「こういうの好き?どうかな?」って。そしてその後女の子には、男の子に聞いておいた、彼好みのヘアスタイルを提案しました。

男の子はきっと「気になる女の子が誘ってくれたお店だ、あの子はどんな人に切ってもらってるんだろう」って好奇心が湧いただろうし、女の子のほうは何も言わなかったけど、「好みを伝えてほしいんじゃないか」って察したんです。だから、私なりにちょっとだけサポートさせてもらった、というか。

――すごい、ヘアスタイルで恋をサポートするなんて……!その子たちはどうなったんですか!?

その後お付き合いの末ご結婚されて、いまでも私の美容室に来てくださっています。結局そうやってお客さんに興味を持つことで、自然に記憶にも残るんですよね。その結果、リピーターとして通い続けてくださることもある。

そして、やっぱり好きなことじゃないと、憶えられないかもしれません。私にとって仕事は生きがいなので、こうやって記憶することもできるけど、ほかの記憶は抜け落ちがちなんです。食材の買い忘れなんか、はしょっちゅうありますからね(笑)。

八木さんの記憶力を上げる方法

  • いろんな人に当てはまる特徴は記憶しない
  • 「そうなんですね!」ではなく、情報を深掘りすることで憶える
  • 「個人的な深い話」を聞き出してメモに書き残す

会う前にWebサイトで相手の情報を仕入れ、会ったらひたすらメモを取る
〜元営業マン・ぼーかりおどPさん〜

プロフィール

  • ぼーかりおどPさん

    漫画とお酒が好きなボーカロイドP。初音ミクを使用し、主にロックを作曲。代表曲は「1/6」「ラストラスト」「ジュゲムシーケンサー」等。前職は営業マンで、企業向けのルート営業を8年間経験。

――おどPさんは営業時代、何社くらい取引先があったんですか?

80社くらいですかね。1週間の中でスケジュールを組んで多い日は7社くらい回っていたかな……。 各社に顔を出す頻度は1週間に1回を目安に、重要なお客さんは週に2度回っていました。

――ということは、80人以上の顔を憶えなきゃいけないんですね。大変だ……!

ただ、不特定多数の顧客が来る飲食店とは違って、ルート営業はこちらから決まったお客さんに会いに行くので、まだ憶えやすい方だと思うんです。苦手意識さえ持たなければ、意外と何とかなりますよ。

――なるほど。お客さんの顔や名前を早く憶えるコツはありますか?

うーん、まずはひたすら通って憶えるのが基本ですが、打ち合わせ中にとにかく細かくメモを取ることですかね。社名、担当者の名前と特徴、売り込み状況などをまとめて。昔のメモをいま見ているんですが、改めて見るとイマイチよくないな……。

――どういうところがよくないんですか?

見た目で記憶しようと体型をメモしているんですが、体型って変わるのであまり役に立たない。「どういう人か」は外見じゃなくて、内面を詳しく書いておくべきでしたね。

ぼーかりおどPさん2

――内面を知るためには、どういうことに気を配っていました?

いきなり仕事の話をするんじゃなくて、雑談から入ることですね。ビジネスライクに接しすぎると話は弾まないし、相手の内面もよくわからないので。たとえば食品メーカーだったら、「僕、御社のこの商品が好きでよく食べてます」みたいな会話からスタートする。

あと、新規開拓でアポがとれたときは訪問前にお客さんの会社のホームページや就活サイトを見て、雰囲気を把握したりもしていました。運よく「先輩社員の声」のコーナーに担当者が載っていると、写真を見て顔を憶えられますし(笑)。

――客先で担当者の顔写真を撮らせてもらうわけにはいかないですもんね。そういう方法もあるのか……!

情報を入れるっていう話だと、営業先の会社に、プライベートで仲良くしている知人がいたことがありましたね。それで担当者を紹介してもらって。

僕はギターを弾くんですが、知人の話だと、その担当者もギターを弾くらしくて。初回の営業時に雑談でギターの話題を振ったところ、「最近のギターはよくわからなくて」と言っていたので、次回までにお茶の水の楽器屋を回り、ギターのカタログをいくつか集めて持って行ったんです。「こんなの流行ってるらしいですよ」って。

――その人のために、わざわざカタログをもらいに行ってきたんですか!?

そう。仕事の話は30分で切り上げて、1時間ずっとギターの話をしていましたね(笑)。そういう付き合いを続けていたら、結局その担当者さん、うちの商品を買ってくれたんですよ。やっぱり営業の醍醐味は、「御社だから」じゃなくて「お前だから買うよ」って言ってもらえた時なんですよね。その人間関係を作るための記憶力だと僕は思います。

ぼーかりおどPさんの記憶力を上げる方法

  • ひたすら細かくメモを取る
  • 相手の外見ではなく、会話の内容や性格など、内面を憶えることが大事
  • 事前にリサーチをして、相手の情報を入れておく

忘れてしまっても、正直に言えば2回目までは許してもらえる
〜バーテン・ツマミ具依さん〜

プロフィール

  • バーテン・ツマミ具依さん

    体当たり系の取材が得意なライター。主な執筆媒体はSPA!、SPOT、プレジデント、Workship MAGAZINE等。ライター業のかたわら、毎週水曜日に歌舞伎町のBAR「ブタ小屋はなれ」にてバーテンをしている。

――ツマミさんはライター業のかたわらバーテンをしてるんですよね。お客さんの顔を憶えるの、大変じゃないですか?

そうですね。バーは店を開けるまでどんなお客さんが来るかわからないので、事前に準備ができないんですよ。そういう難しさはあります。

――お客さんはどのような方が多いんですか?

友人、Twitterで知ってくれた方、ライターや編集者といった同業者、常連さんに誘われて来た方々、ですかね。

――多種多様な属性の方が多いですが、憶えられるものですか?

特に同業者のお客さんと接する時は、緊張するんですよ。ライターさんって、みなさん記憶力や観察力に優れているので、もし忘れてしまったら失礼にあたるかな、と思って。「この前来てくれたの、いつでしたっけ?」みたいな質問で記憶の糸口をつかむようにしていますね。

――そうすると「あの話したじゃん!」みたいなヒントをもらえることもありますよね。

そうなんです! 話してるうちに思い出せることもありますし。でも、どうしても思い出せないときは最終手段で「すみません!お名前が出てこなくて!」と正直に聞いちゃうときもありますね。1回しかお会いしていなかったり、最後に会ったのが数年前だったら聞いても許してもらえるかなって。そこでしっかり聞いて、次こそはちゃんと覚えておくようにします。

ツマミ具依さん2

――確かに、後になればなるほど聞けなくなりますもんね。記憶するためのコツなどはありますか?

お客さんが複数人いると、どうしてもよくしゃべる人に意識が集中しちゃうんですけど、寡黙な人にもこちらから話を振るようにしています。

お客さん同士で盛り上がってるときに水を差すと悪いので話に入らないこともあるんですが、会話をしないとやっぱり憶えられないです。そして話すときは、しっかり目を見てコミュニケーションしています。

――お店に行くと、ツマミさんはいつも色んな人に話を振っていて「気遣いが上手だな~!」と思っていたんですが、あれはお客さんを憶えるうえでも重要なことだったんですね!

そうなんです。あと、Twitter経由で来店してくれたお客さんには、アカウントを聞いてスクショを撮ったり、初回にはお礼のDMを送っています。話の内容に軽く触れつつお礼をすることで、2回目に来ていただいたときにDMを見れば会話のヒントになるんです。そうやっていると、2〜3回会った頃にはだいたい顔を憶えられているかな。

お店以外のシーンだったら一番いいのは写真を撮ることですね。「ライフログで写真を撮ってるんだ、ネットには上げないから撮らせて」と前置きすれば、そういうキャラだと思って撮らせてもらえるし。

――そう言えば私も高校生の頃、知り合った人とプリクラを取りまくっていましたね。流行っていたから自然に撮れたし、後から見返すと顔を思い出せるので。

そうそう、それですよ! それでも自信がないようなら、「私、人と●回は会わないと、顔が憶えられないんです」って先に言っておいたらどうですか? 私なら、「だから、お店に●回は来てね!」って言っちゃうと思います!

ツマミ具依さんの記憶力を上げる方法

  • SNSで繋がって、お礼がてら会話の内容を簡単に書いておく
  • 「この前会ったのいつでしたっけ?」で会話の糸口を探る
  • 憶えていなければ、素直に謝って聞いてしまうのも手

記憶力は努力と工夫で上げられる!

ということで、三者三様の記憶術を教えていただきました! あまりにも為になりすぎて、オンライン取材にも関わらず、前のめりになってしまいました。

前のめりイメージ

これまでの私は「人の顔を憶えるのが苦手」という意識が強いわりに、メモを取るでもなく、「相手の服の色」という不確実な要素で記憶しようとしていました。

プリクラを撮って遊んでいた頃と違い、「もうそんな年齢じゃないしな……」と、人と写真を撮る機会もめっきりなくなっていたわけで、ましてや初対面の人のことなんて憶えられるわけがなかったんですよね。しかし今回の取材で、努力と工夫さえあれば記憶力が上げられることがよくわかりました。

これからは教えてもらったテクニックを使って、記憶力をどんどん上げて行こうと思います。がんばるぞー!!


(取材・執筆:少年B 編集:波多野友子/ノオト)

FEEDBACK 評価 / コメントする

PICK UP KEYWORD 注目キーワード

Magサイトで注目されているキーワードをご紹介します。

CATEGORY カテゴリ

  • CONDITION

    脳のコンディションをサポートする
    情報を掲載。

    一覧へ
  • FOOD

    健康的な食習慣に関する
    情報を掲載。

    一覧へ
  • FITNESS

    健康のための体づくりに関する
    情報を掲載。

    一覧へ
  • LIFE

    自分や身近な人の
    脳の健康ケアについて掲載。

    一覧へ
  • BRAIN PERFORMANCE

    脳のパフォーマンスを有効活用する
    情報を掲載。

    一覧へ
  • COLUMN

    脳の健康に関する特集を掲載。

    一覧へ

Easiit Mag利用規約

はじめに

エーザイ株式会社(以下、「当社」といいます)がEasiit IDを登録した会員(以下、「会員」といいます)向けに運営する、認知症を含むヘルスケア(運動、食事、睡眠など)等に関するコンテンツを提供するサービスEasiit Mag(以下、「当サービス」といいます)のご利用に当たっては、以下の注意事項を熟読いただき、この利用規約(以下、「当規約」といいます)に同意された場合にのみご利用ください。同意いただけない場合には、誠に申し訳ございませんがご利用をお控え下さい。なお、当サービスをご利用いただいた場合には、下記内容に同意いただいたものとさせていただきます。また、当規約については、当社の判断により変更する場合があります。当規約の変更後に会員が当サービスを利用した場合、当該会員は変更後の規約の内容に同意したものとします。

サービス内容

当サービスは、認知症を含むヘルスケア(運動、食事、睡眠など)等に関するニュース、レシピなどのコンテンツが読める会員向けサービスです。 Easiit IDを利用して、当サービスにログインすることにより、利用者は記事にコメント投稿、評価を行うことができます。

禁止行為

会員は本サービスを利用するにあたり、以下の各号に規定する行為・投稿をしてはならないものとします。

  • 犯罪行為に結びつく、もしくは助長する内容
  • 法令に反する内容
  • 営利宣伝目的を含む内容
  • 特定の政治的または宗教的主張を含む内容
  • 根拠なく当社または第三者の評判を毀損しまたは信用不安を引き起こすおそれのある内容
  • 当社または第三者の著作権、名誉、プライバシーその他の権利を侵害しまたはそのおそれのある内容
  • 差別的表現を含む内容
  • 低俗、有害、下品その他他人に嫌悪感を与える内容
  • 有害なプログラム、スクリプト等を書き込む行為
  • その他当社が不適切と判断する行為

マイル付与

当社は、Easiit Mile利用規約に従い、当社が定める方法により、本サービスの利用に応じてお客さまにマイルを付与することができるものとします。
当社は、会員に事前に通知することなく、マイル付与条件を新設、変更、終了することができるものとします。

以上

同意する