脳の老化を防ごう! ブレインパフォーマンスの維持に役立つ生活習慣のポイント

近年、「ブレインパフォーマンス(Brain performance)」という言葉が注目を集めています。これは、“脳の健康度”を表す言葉で、豊かな心を保ち、充実した社会生活を営むためには、身体だけではなく脳を健康に保つことが重要だという考えに基づいたものです。

定期的な運動習慣やバランスの良い食事、社会とのつながりなど、日常生活での工夫が、脳の機能低下を抑制するといわれています(※1)。ブレインパフォーマンス維持のためによいライフスタイルは、脳だけでなく身体全体の健康を支えるもの。年齢を問わずメリットを感じられるでしょう。

ブレインパフォーマンスを維持するために取り入れたい生活習慣の工夫について、7つの観点から具体策を紹介します。

  • 1 Fratiglioni L, et al.: Lancet Neurol, 3:343-353, 2004

食習慣を改善するポイント

脳の健康に、食生活の改善は欠かせません。日々の食事についての留意点や改善のポイントを確認しましょう。

理想的な食事「地中海食」とは?

理想的な食事「地中海食」とは?

地中海食とは、主な油脂にオリーブオイルを使い、季節折々の野菜や果物、ナッツ類、魚介類などをふんだんに取り入れた伝統的な料理のこと。タンパク源として肉類より魚介類を多めに摂ること、食事中に赤ワインを適量摂取することが特徴です。

地中海食は、生活習慣病のリスクを低下させる健康的な食事だといわれます。また、認知機能低下のリスクを減少させるとする研究報告もあります(※2)。

  • 2 Singh et al., 2014

日本食は世界に誇る健康食

日本食は世界に誇る健康食

主食(米飯)、主菜(魚や肉)、副菜(野菜が主体)、汁(みそ汁やお吸い物)で構成される日本食も、他国の食事と比べて栄養バランスが優れているといわれます(※3)。

日本食や地中海食のように多種多様な素材を使った食事は、栄養バランスはもちろん、脳にもよいと考えられます。献立を考える、素材を買いに行く、炊事をするといったさまざまな食行動が伴うため、脳の活性化にも有効といえるからです。

ただし、太り過ぎの観点から、食べ過ぎには注意しましょう。素材の味を活かしたり、だしを利かせたりといった工夫をして、「減塩」を心がけることも大切です。

  • 3 Ozawa M, et al. Am J Clin Nutr. 2013;97(5):1076-82

おいしく楽しく、心を満たすのも大事です

おいしく楽しく、心を満たすのも大事です

食卓は、単なる栄養を摂取する場ではなく、心の健康を支える場でもあります。人と関わりながら楽しめる食事は、心の栄養にもなり、自分や家族の健康にもつながります。

家族などと食卓を囲むことは、健康状態や良好な食生活に影響を与えるといわれています。たとえば国内のある研究では、誰かと食事をともにする頻度の高い人は、日常生活で気が散る・根気がないなどの精神的な自覚症状が少ないことがわかっています(※4)。また、食生活においてファストフードの利用が少ない(※5)、野菜や果物など健康的な食品の摂取頻度が高い(※6)といった傾向もみられます。

海外で行われた研究でも、家族と頻繁に食事をともにしている人は、野菜や果物の摂取量が多いなど食物摂取状況が良好だったという結果が示唆されています。

  • 4 小西史子.小児保健研究. 2001; 60:739 ~748 2001
  • 5 浅野真智子ら. 栄養学雑誌. 2003; 61:47-54
  • 6 須山靖男. 体力研究. 2003; 101: 8-17

「噛む力」を改善するポイント

食事の改善とともに取り組みたいのが、「噛む力」を低下させないこと。食べ物を「噛める人」と「噛めない人」では、栄養状態に差が生まれるといわれます。どうすれば、よく噛み、きちんと栄養を摂取できるようになるのでしょうか。

「噛む力」を維持して、効率的に栄養摂取を

「噛む力」を維持して、効率的に栄養摂取を

「噛む力」が低下すると、柔らかい食べ物を好むようになります。柔らかいものは食べやすい一方で、あまり噛む必要がありません。そのため、噛む力はますます低下。栄養を摂取する力も、同時に落ちていってしまいます。

「噛む力」を維持、向上させるための習慣

  • よく噛んでから飲み込む。ひと口につき30回噛むことを目標に。
  • 基本的に毎食後、歯磨きをする。特に朝と夜はていねいに。
  • 歯や歯ぐきの不具合、歯石の付着を放置せず、早めに歯科へ行く。
  • ゴボウやレンコン、キノコ類など繊維質の多い野菜を食べる。
  • 白米より玄米や雑穀米を、白い食パンより全粒粉入りの硬いパンを選ぶ。
  • 食事のとき、水分を多量に摂らない。
  • 禁煙する

生活に取り入れたい運動のポイント

運動は、体の健康にも脳の健康にも役立ちます。今すぐ取り入れやすい運動、認知機能によい影響を与える運動を紹介します。

運動には多くの医学的効果があります

運動には多くの医学的効果があります

体を動かす習慣を身につけることは、医学的にも多くの効果があるといわれています。

運動の主な医学的効果(※7)

  • 動脈硬化性疾患(心筋梗塞など)にかかるリスクが低下する。
  • 心肺機能が向上し、感染症にかかるリスクが低下する。
  • 脳血流、ニューロンが増加し認知症にかかるリスクが低下する。
  • 体温が上昇し、リラクゼーション効果が得られることで睡眠の障害が改善する。
  • 体脂肪を減らして肥満の予防・改善が図れる。
  • 脂質異常症、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防・改善。
  • 筋力向上、筋肉量増大によりフレイルやサルコペニアを予防・改善する。

など

  • 7 「疾病予防および健康に対する 身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因」武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科 内藤義彦 厚生労働省

ちょっとがんばって「筋トレ」にチャレンジ

筋トレの目的は、筋肉を増やして筋肉量や筋力を維持し、QOL(生活の質)を維持・向上させることです。筋肉から脳に伝わる情報によって、脳を内側から刺激し、活性化することもできます。

食事で摂ったタンパク質を効率よく筋肉に変えるためには、食後30分~2時間以内にストレッチ運動やスクワットなどの軽い筋トレを行いましょう。下記は、座ったままできる軽い筋トレの例です。

ちょっとがんばって「筋トレ」にチャレンジ

「有酸素運動」で全身の血行を促進

ウォーキングやジョギングに代表される有酸素運動は、全身の血行を良くするなど、生活習慣病の予防や改善に役立ちます。長年にわたって積極的に運動を取り入れてきた人は、そうでない人と比べて、認知機能低下のリスクが低いという研究結果もあります(※8)。下記は、ウォーキングの正しい歩き方とコツです。

「有酸素運動」で全身の血行を促進

  • 8 Gallaway et al., 2017; Hamer & Chida, 2009; Sofi et al., 2011; Stephen et al., 2017

「頭の体操」も効果的です

「デュアルタスク(二重課題)」とは、同時に2つ以上の課題をこなすこと。ウォーキングや簡単なステップなどの軽い運動をしながら、しりとりや計算などの認知課題を同時に行うと、認知機能の維持により効果的です。下記は、その一例です。

「頭の体操」も効果的です

睡眠習慣を改善するポイント

近年の研究で、「睡眠は量より質」と考えられるようになりました。睡眠の質を高めるために取り入れたい日々の習慣について紹介します。

朝食は必ず食べましょう

朝食は必ず食べましょう

朝食を摂ると、体内時計がリセットされ、眠っていた身体が動き出します。そのため、昼間の活動や夜の睡眠の質を高める効果があります。

10分以内の昼寝を

10分以内の昼寝を

昼食後、短時間の昼寝で疲労回復をすると、午後の生産性や集中力、学習能力などが上がります。ただし、長く寝すぎるのは逆効果。短い「ちょい寝」がポイントです。

布団に入る2時間前に入浴を

布団に入る2時間前に入浴を

入浴は、就寝時間より2時間ほど前がおすすめ。39℃~41℃のぬるめのお湯に5分以上浸かり、入浴後に体温が下がってきたところで布団に入ると、よく眠れるようになります。

寝床でテレビ、スマホはNG

寝床でテレビ、スマホはNG

液晶テレビやスマートフォン、パソコンなどから出るブルーライトは、非常に強い光です。夜、目から強い光を浴び続けると、メラトニンという良質な睡眠に必要なホルモンの分泌が妨げられてしまいます。

喫煙と飲酒についての考え方

「百害あって一利なし」のタバコ。適量を超えてしまうと危険を伴う飲酒。これらと、どう付き合っていけばいいのでしょうか。具体的な対策法を紹介します。

禁煙外来を利用してみましょう

禁煙外来を利用してみましょう

自力で禁煙するのが難しい場合は、禁煙外来に行ってみましょう。一定の条件を満たせば、健康保険を使って禁煙治療を受けることができます。地方自治体によっては、禁煙外来の治療費助成を行っていることも。専門家の力を借り、禁煙を成功させましょう。

お酒は飲むなら適量に

お酒は飲むなら適量に

昔から、適量の飲酒には健康効果があるといわれてきました。飲酒には食欲増進作用があり、ストレス解消にも効果的とされています。

過去の研究では、健康的なライフスタイルの人が飲酒をするとき、低・適度の飲酒では認知機能が低下するリスクは低くなり(※9)、また大量の飲酒ではそのリスクが高くなる(※10)という結果も出ています。

では、どの程度の飲酒を“適量”と呼ぶのでしょうか。「健康日本21」(厚生労働省)によれば、「節度ある適度な飲酒量」は1日平均20g程度。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合程度が理想的とされています。

  • 9 Elwood P, Gallant J, Pickering J. Et Al. Healthy lifestyles reduce the incidence of chronic diseases and dementia: evidence from the Caerphilly cohort study. PLoS One. 2013:8(12):e81877
  • 10 Xu G, Liu X, Yin Q,et al.Alcohol consumption and transition of mild cognitive impairment to dementia. Psychiatry Clin Neurosc:63(1):43- 49.

積極的な社会参加を

社会参加で得られるのは、人との出会いや何かを成し遂げた達成感。これらは、脳に良い影響を与えてくれます。まず、どんな一歩を踏み出せばよいのでしょうか。

地域活動に参加して、社会との新しいつながりを!

地域活動に参加して、社会との新しいつながりを!

まずは、ボランティアや自治体活動などの地域活動に参加して、社会との新しいつながりを育ててみましょう。いずれ介護サービスなどで、自治体のお世話になるときがやってくるかもしれません。そのときのためにも、地域コミュニティに参加することはとても大切です。ひょんなところで新しい友だちができたり、自分の知識や特技が活かされたりするかもしれません。

社会参加の機会が減ると、認知機能にも影響が現われます。海外の研究では、社交ダンスをする人は認知症になる相対危険度が0.24倍に減るとされています(※11)。

  • 11 Verghese J et al. N Eng J Med 348: 2508 – 2516 (2003)


出典:相談e-65(一部改変)

編集:有馬ゆえ、水上歩美(ノオト)

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