人生をより健やかに、より豊かに生きるための「ブレインパフォーマンス」とは

平均寿命と健康寿命がともに世界トップクラスといわれる長寿国の日本。人生100年時代が到来するといわれるなか、健康で長生きをするために関心を集めているのが「ブレインパフォーマンス(Brain Performance)」です。その基本的な考え方と、ブレインパフォーマンスを維持するためのポイントを紹介します。

「ブレインパフォーマンス」とは?

脳を最大限に活用し、機能を維持しましょう

「ブレインパフォーマンス」で重要なのは、脳を最大限に活用して機能の衰えを軽減し、健康な状態を保つこと。定期的な運動習慣を身に付けたり、バランスの良い食事をとったり、社会とのつながりを維持したり、精神的に活発であり続けたりと、日常生活に工夫を重ねることで、脳のさまざまな機能の低下を抑えられるといわれています(※1)。

ブレインパフォーマンスによいライフスタイルは、生活習慣病のリスク軽減につながるなど、身体全体にとっても望ましいもの。自分の「ブレインパフォーマンス」へ配慮し始める時期に、早すぎる、遅すぎるといったことはありません。どの年代であっても、健康的な選択には必ずメリットがあるのです。

  • 1 Fratiglioni L,
    et al.: Lancet Neurol, 3:343-353, 2004

誰にでも脳の老化は訪れます

年齢を重ねれば、身体だけでなく脳も老化していくもの。個人差は大きいですが、脳の神経細胞の減少、脳の血流の低下といった加齢による変化が、もの忘れや認知機能(理解力や記憶力、判断力など)の低下といった症状になってあらわれます。

とはいえ、脳の老化はただ進んでいくだけではありません。たとえば、認知症の前段階にある「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」。これは、認知機能に低下が見られるものの、まだ日常生活に支障をきたしていない状態を指す言葉です。2012年の時点で、日本では約400万人もの人が該当すると推測されています(※2)。

ただし、一口に軽度認知障害(MCI)の疑いがあるといっても、その原因はさまざま。また、認知症を発症しないまま、現状が保たれたり、回復したりすることもあります。これまでの研究でも16~41%の人が元の健康な状態に戻ったことが報告されているのです(※3)。

  • 2 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(2013.5報告
  • 3 認知症疾患診療ガイドライン2017,「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会, p147, 2017, 医学書院

ブレインパフォーマンスの維持向上につながる生活習慣とは?

どんな日常生活を送るかで、脳の健康は大きく変化します。具体的に、どんな生活習慣が大切なのでしょうか。

年齢に応じた健康的な食習慣を

年齢に応じた健康的な食習慣を

健康的な食習慣は、身体だけではなく、脳の健康にも貢献します。ポイントは、年齢に応じた栄養の摂り方です。

統計的に、高齢になると痩せている人ほど病気になるリスクが高いことが明らかになっています(※4)。

65歳を過ぎたら、肉、魚、大豆製品など、筋肉の材料になるタンパク質を意識し、積極的に食生活に取り入れていきましょう。

「噛む力」が心身の健康を支えます

「噛む力」が心身の健康を支えます

栄養バランスのよい食事は、生活習慣病やフレイル(年齢を重ねるとともに心と体の活力が衰えた状態)の予防につながります。

しかし、同じ食事を摂っていても、噛む力が低いと十分に栄養を摂取することができません。食べものを噛む力は年をとるにつれて低下し、「噛める人」と「噛めない人」を比べると、栄養状態に大きな違いがでてくることがわかっています(※5)。

歯ごたえのあるものを噛むなど、噛む力を低下させない食生活を心がけましょう。かかりつけの歯科医をもち、定期的に虫歯や歯周病をチェックするのも大切です。

  • 5 池邉一典 日本静脈経腸栄養学会雑誌 2016; 31(2): 681-686

いつもの生活にプラスアルファの運動を

適度な運動が心身の健康につながることは、よく知られています。体を動かすことは、身体機能の向上、生活習慣病の予防だけでなく、脳の活性化にもよい効果があるといわれ、その重要性、医学的効果は多くの研究でも明らかになっています(※6)。

厚生労働省の「身体活動基準2013」では、日常生活での家事や仕事、活動などの身体活動以外に、週2 回以上、1 回30 分以上の運動を習慣的に行うことが望ましいとされています。

ただ、いざ運動しようと思っても、日々実践することはなかなか難しいかもしれません。無理は禁物ですが、いつもより少し長く歩くように心がけるなど、できることから始めてみてください。

  • 6 Wong WD, et al.
    Pharmacoepidemiol Drug Saf 2013; 22(4): 345-359

睡眠は“質”が重要です

睡眠は“質”が重要です

最近では、科学的根拠に基づき、眠りの質を高めるための睡眠習慣が推奨されています。それらのなかには、これまでの常識と大きく異なるものもあります。

たとえば、以前は「眠れなくても目を閉じているだけで身体は休まる」といわれていました。しかし、今は、眠たくなってから寝床に入ることが大事だといわれます。眠れないのに悶々と寝床で過ごしていると、かえって睡眠の質が低下し、不眠がより悪化すると考えられています(※7)。

  • 7 厚生労働省健康局 睡眠づくりのための睡眠指針 2014

たばこは×、飲酒は適量なら◯

たばこは×、飲酒は適量なら◯

喫煙が脳の健康に悪影響を与えることは、今や医学界での常識です。さまざまな研究・調査が行われていますが、喫煙者は非喫煙者に比べて1.5 倍~2倍も認知機能が低下しやすいことがわかっています(※8)。

そもそも喫煙は、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病と関わりが深く、それらの生活習慣病は脳の機能低下のリスクを高めます。喫煙者でも禁煙が続けば、たばこを吸わない人と同じ健康状態に近づくともいわれています。もし喫煙習慣があるならば、できるだけ早く禁煙することをおすすめします。

  • 8 認知症疾患診療ガイドライン2017,「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会, p131, 2017, 医学書院

余暇を通して社会に関わりましょう

余暇を通して社会に関わりましょう

健康寿命のポイントとされる「栄養」「運動」「社会参加」のうち、意外に大切なのが社会参加です。何らかの原因で社会参加ができなくなると、心身のさまざまな側面がドミノ倒しのように弱まってしまう傾向があります。

最近の研究では、知的要素(ゲーム、囲碁、麻雀、映画・演劇鑑賞など)、身体的要素(スポーツ、散歩、エアロビクスなど)、社会的要素(友達に会う、ボランティア活動、旅行など)が含まれる余暇活動は、認知機能維持によい影響を与えるという多くの報告があります(※9)。

栄養や運動はもちろん大切ですが、余暇活動もストレスにならない程度に楽しみましょう。

  • 9 認知症疾患診療ガイドライン2017,「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会, p135, 2017, 医学書院


出典:相談e-65(一部改変)

編集:有馬ゆえ、水上歩美(ノオト)

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