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【連載】うちの親が認知症? ~まさかに備えて介護を学ぶ~vol.2

超高齢化社会に突入した日本では、「親の介護」は誰もが避けて通れない問題となりました。 「うちの親は、健康に気をつけているから大丈夫」と思っていても、病気や事故などに巻き込まれることも。中でも、認知症は近年増加の一途をたどっており、介護を担う家族の負担は深刻です。そこで、予期せぬ事態に慌てないための心構えやノウハウを、介護アドバイザーに教えてもらいます。
第2回 まずは認知症の種類と症状を知ろう
「認知症」とひとくちに言っても、実は多くの種類に分けられることをご存知でしょうか?
私が34歳で突然に両親を介護することになったとき、さまざまな種類の認知症があることを知らなかったために、かなり振り回されることになりました。「認知症というものについて、もう少し学んでおけばよかった」と、何回後悔したかわからないぐらいです。
両親はともに「アルツハイマー型認知症」を患っていたうえに、父は「脳血管性認知症」を併発していました。脳血管性認知症でよく起きるといわれる感情失禁が強く出て、施設で出されるおやつを自分が食べて無くなったことを忘れ何時間も怒ったり、涙を流して悲しんだりしていました。また、母は同時期に「統合失調症」も罹患してしまいました。認知症とは別の精神疾患である統合失調症の影響が強く、「大切な息子(=私)が大病を患っている」などと不安をもらすことが多かったので、少しでも安心できるよう私なりに手を尽くしていました。しかし、途中から発症したアルツハイマー型認知症による記憶障害によって、いったん安心した理由をすぐに忘れるようになり、連日のように不安を訴えるようになりました。
実は、原因となる疾患により認知症は「13分類、70種類以上」もあるそうです。そして、同時に複数の認知症になることもあり、ある専門医の方に「同時発症の場合は、通常より対処が難しい」と伺ったことがあります。認知症にはどんな種類があるのか、それぞれの特徴は何かなどを知っておくだけでも違います。
認知症の症状には「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」がある
まず認知症になると、どんな症状が出てくるのでしょうか?
認知症の症状は、すべての種類の認知症、すべての患者に現れる「中核症状」と、認知症の種類や患者によって現れたり現れなかったりする「周辺症状(BPSD)」という2つに大きく分けられます。本人や家族がツライ思いをするのは圧倒的に周辺症状(BPSD)のほうです。それぞれの具体的な症状については下の図にまとめてみましたので見てください。
家族があらかじめ「どんな周辺症状(BPSD)が起こるのか」を知っておけば、本人の言動に違和感があったときにすぐ、専門医や介護のプロに相談しながら対応でき、将来的なリスクを下げることが可能です。図のなかの各症状を読むだけで怖くなり、目を背けたくなる人がいるかもしれません。しかし、今後大きな失敗をしないためにも、「将来、起こるかもしれない話」としてご理解いただければ幸いです。
周辺症状の具体例
【不安・抑うつ】…意欲の低下や不眠、食欲が落ちたり何事にも興味を示さなくなったりする。
【認知症による徘徊】…自分の家にいるのに「ここは私の家ではないから、家に帰らなくては」と言うなど、本人以外にはよくわからない目的で、絶えず家の中や戸外を歩き回る。
【弄便】…自分の便をいじったり、便を自分の体や寝具・壁などに擦りつけたりする。
【物盗られ妄想】…自分でしまい忘れた財布や眼鏡などの身のまわりのものを、家族や介護者などに盗まれたと疑う。
【認知症によるせん妄】…時間や場所、家族の顔がわからなくなったり、幻覚を見たり、興奮したりする。
【幻覚】…実際にはいない子ども、人、動物などが「見える」幻視や、幻聴・幻味・幻臭・体感幻覚などが現れる。
【暴力・暴言】…ささいなことで怒りだし、暴言を吐いたり暴力をふるったりする。
【介護拒否】入浴や着替え、食事、デイケアでの外出などの介護を受けることを嫌がる。
【失禁】「トイレの場所や使い方がわからない」「尿意が認識できない」などの理由で失禁する。
【睡眠障害(不眠、昼夜逆転など)】日中に活動せず昼寝の時間が多くなって昼夜逆転し、体内時計がうまく調節できず、睡眠のリズムが崩れてしまう。
【帰宅願望】…「家に帰りたい」と訴えたり、実際に家を出て行ってしまったりする。
【異食】…ティッシュペーパーやビニールなど、食べ物ではない物を口に入れてしまう。
アルツハイマーだけではない主要な認知症の特徴とは?
現在「13分類、70種類以上」ある認知症のうち、代表的な4つの認知症をピックアップし、その原因と特徴について「相談e-65.net」を参考に、講演などで使用している情報も加えてまとめてみました。もしも、自分の親がちょっとおかしいなと感じたら、以下の特徴に当てはまるかどうか確認してみてください。
物忘れが進み、ささいなことで怒りっぽくなる
アルツハイマー型認知症(全体の約50%)
【原因】
脳に「アミロイドベータ」というたんぱく質がたまって老人斑を形成し、「タウたんぱく質」のリン酸化が起こることから、正常な神経細胞が壊れ、脳萎縮が起こることが原因だといわれています。記憶を担う海馬から始まり、脳全体に広がります。
【特徴】
物忘れの進行が早まり、文字を書くことや、生活するなかで自分の行動を決めることなど、今までできたことが少しずつ困難になる。生活上での混乱が目立ち、ちょっとしたことで怒りっぽくなるといわれています。
存在するはずがない人や虫などがいると言い張る
レビー小体型認知症(全体の約15%)
【原因】
脳の神経細胞の中に「レビー小体」というたんぱく質がたまることで起こる脳の萎縮が原因だといわれています。
【特徴】
体の動きが緩慢になり、歩行の障害や体の硬さを伴うため、転倒しやすくなるほか、幻視として色がついた鮮明な人・動物・虫などが昼夜問わず出現したり、幻聴も発生したりする。さらに、認知機能障害も変動しやすく、具合が良いときは話が通じるが、悪くなると話も周りのこともわからなくなるといわれています。また、眠っているときに怒鳴ったり、奇声をあげたりすることもあります。
すぐに泣いたり怒ったりするようになる
脳血管性認知症(全体の約15%)
【原因】
脳梗塞や脳出血など、脳の血管障害によって起こるといわれています。脳の血管が詰まっている梗塞巣が増えたり、大きくなったりするごとに神経細胞が障害を受け、徐々に脳の機能が低下し、認知症や運動障害が引き起こされるそうです。
【特徴】
判断力や記憶力は比較的保たれているものの、意欲低下や自発性低下、夜間の不眠や不穏が目立ち、どれも症状の変動が激しいことが多いとされています。また喜怒哀楽が激しく、感情失禁(わずかな刺激で過剰に泣いたり、笑ったり、怒ったりして、感情の抑制がきかない状態)が起きることもあるそうです。
急に人が変わったようになる
前頭側頭型認知症
【原因】
「タウたんぱく質」やTDP-43、FUSなどさまざまなたんぱく質が変化し、脳内に蓄積することによって前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することによって起きるといわれています。
【特徴】
初期には物忘れや失語はあまりみられず、他人に配慮することができない、周りの状況に考えず自分が思った通りの行動をとってしまうなど、人格の変化や非常識な行動などが目立つといわれています。その後、同じ行動を繰り返したり、集中力が低下したりするようになるそうです。他の認知症と違い、指定難病に認定されています。
- 全体に占める割合は、2019年2月4日付「国の地方支分部局職員を対象とした認知症サポーター養成講座『認知症の基礎知識と対応について』」より引用。
- 認知症のもっと詳しい症状やお役立ち情報をごらんになりたい方はこちら。
家族だけで抱え込まずに、専門医を受診することが大切
認知症は種類が多く、症状もさまざま。しかも人によってどんな症状が強く出るかはバラバラです。サポートする側の家族が素人判断で対処しようとすると、状況を悪化させることも少なくありません。私のように、親の認知症が発覚してから右往左往することがないように、できるだけ早いタイミングで専門医の診断を受け、医療や介護の専門家たちと一緒になって本人を支えることを心がけましょう。
[COLUMN]認知症専門医の見つけ方、受診のポイント
「認知症の専門医を受診しよう」と言われても、どこにその専門医がいるのかわからない人も多いと思います。公益社団法人「認知症の人と家族の会」が、「全国もの忘れ外来一覧(http://www.alzheimer.or.jp/?page_id=2825)」を公開しているので、近くの医療機関などを調べてみましょう。各都道府県に支部(http://www.alzheimer.or.jp/?page_id=8)があり、相談対応や家族同士の意見交換といった活動をしているので、そちらに参加するものオススメです。
医療機関を受診する際は、あらかじめ次のポイントを整理したうえでおくとスムーズです。
- 気になる症状と、症状が出始めた時期は?
- 症状が出たきっかけ、病気や事故などはあったか?
- 家族が気づいてから、これまでに悪化した様子は?
- 過去にかかった病気、現在治療中の病気は?
- 服薬中の薬があるか?何をいつから服薬しているか?(※できればお薬手帳を持参)
- 家族として心配なこと、気がかりなことは?
編集:株式会社エアリーライム
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