仕事のムダとミスを減らす「脳の時間割」 vol.1

仕事のムダとミスを減らす「脳の時間割」 vol.1

仕事のムダとミスを減らす「脳の時間割」vol.1
脳の時間割に合わせれば、仕事のパフォーマンスはUPする

「脳には1日に二度、うまく働かない時間帯がある」って知っていましたか? 逆に「日常的に行うさまざまな行動には、それぞれ脳力を最大限に生かす時間帯がある」ということも。残念なことに、多くの現代人はその時間割を無視した行動を習慣化してしまっているようです。「脳の時間割」を提唱する菅原洋平さんに、上手な脳の生かし方を、6回に分けて講義していただきます。

あなたはやっている? NGあるあるチェック

まずはこんな設問から。当てはまるものにチェックしてみましょう。

☑ 朝起きてすぐ、スマホを見る

☑ 出勤してまず、メールチェックをする

☑ 昼休みは気分転換にのんびりネットを見る

☑ 上司への提案を、午後イチにする

☑ 夕方少し疲れた頃に仮眠をとる

☑ 眠気はコーヒーでスッキリ

☑ 忘れないように付箋をつけておく

いかがでしょうか。全部当てはまったという人も少なくないのでは?

実は、これらはすべて「脳には効率よく作業ができる時間帯がある」という点から見たら、NG。仕事の効率をダウンさせてしまう行動なのです。

「近年、時間医学の研究が進み、脳には脳なりのリズムがあることがわかってきました。人間の脳と体のリズムに従って仕事や社会生活のリズムを合わせれば、もっとパフォーマンスは上がり、体調不良の予防にもつながるはずです」と話すのは、作業療法士の菅原洋平さん。「脳の時間割」の提唱者で、このメソッドを企業研修や患者さんへのリハビリテーションなどに応用しています。

知らずに行っている「脳」のムダ使い

知らずに行っている「脳」のムダ使い

先に挙げた項目がなぜNGなのでしょうか。

「それは脳のリズムに合っていないからです」と菅原さん。

「例えば、朝や出勤直後はもっとも脳の活動が盛んになっているとき。そんな貴重な時間帯に、たいして重要ではないスマホやメールをチェックするのは、脳のエネルギーをムダにする“もったいない作業”といえます」

人間は基本的に、目覚めて2時間後に男性ホルモンの『テストステロン』の分泌が高まります。また、3時間後に最も記憶力が高まります。テストステロンは、ギャンブルなどの賭け事や、大きな決断を迫られているときに分泌量が増える脳内物質。出社早々は、朝のクリアな頭の状態で自然にテストステロンが増えるため、重要な決断を下すのにおすすめです。また、記憶力が高まる起床3時間後は、しっかり頭に叩き込みたい案件に向き合ったりするのに適しています。

「朝7時に起きたのなら、9時~10時台はぜひこうした作業にあててほしい。そのほうが効率がよいからです。メールのチェックはその後に行いましょう」(菅原さん)

ちなみに、上司への提案は、午前中でも遅めの時間が望ましいとのこと。なぜならテストステロンの濃度が高まるほど、共感能力が低くなり、興味の対象が限定されることが知られています。朝イチに何かを提案しても、はねつけられるリスクが上がると考えられるのです。それよりも起床5時間後、つまり昼食前は、免疫力が高まってメンタルが最もタフになる時間帯。このときには思い切った提案や、お互いに突っ込んだ議論がしやすいでしょう。

神経伝達物質の分泌リズム=脳の時間割

神経伝達物質の分泌リズム=脳の時間割

このように、脳の時間割からするとNGの行動には、それぞれ理由があります。

これを踏まえてパフォーマンスを高める行動に変えるためには、脳の時間割、いわゆる生体リズムを理解する必要があります。

脳のリズムに影響を与えているのは、神経伝達物質。ニューロンと呼ばれる神経細胞の神経線維末端から放出されて、脳細胞を興奮させたり、逆に抑制させたりする物質です。

前述の『テストステロン』もそのひとつ。よく耳にする『アドレナリン』は興奮作用をもたらす神経伝達物質で、気分や状況によって分泌する量が変わりますが、起床から7時間後にたくさん分泌されることが分かっています。また、睡眠に関係する『メラトニン』は朝の光で分泌がストップしてから約16時間後に再び分泌を始めます。夜になって眠くなるのは、このメラトニンの働きによるものです。

「こうした神経伝達物質の分泌に合わせて活動することが〝脳の時間帯に合わせた行動〟なのです」(菅原さん)

がんばっても効果が出ないと感じているなら、脳の時間割で習慣の見直しを

がんばっても効果が出ないと感じているなら、脳の時間割で習慣の見直しを

一般的に、最も脳が冴えている時間が午前、最も眠い時間が就寝前。ですが、脳が冴えている時間と、眠くなる時間ははっきり区別されているわけではなく、波のような形を描いて繰り返されます。起床から8時間後と22時間後は、脳の活動が低下して、頭が働かなくなる時間帯です。

「こうしたリズムを無視していては、いくらがんばっても思うような成果は上がりません。逆にこれを踏まえて行動すれば自ずと仕事の効率は上がりますし、ストレスがないので体への負担も少なくなります」(菅原さん)

忘れ予防の付箋の功罪

忘れ予防の付箋の功罪

ちなみに、忘れないように付箋を貼るというのはオフィスでよく見られる光景の一つですね。パソコンの周囲は付箋だらけ……という人も多いのではないでしょうか。

「脳の容量にはキャパシティがあります。だから余分な情報を入れないことが、脳の活動を低下させないポイントです。付箋はやるべきことを忘れないために貼るわけですが、それを常に目にすることで、その時には必要としない情報が脳に入り込む。その結果、脳の働きを邪魔してしまうのです」(菅原さん)

逆説的ですが、脳の活動からみると「付箋は見えるところに貼らない」こと。メモを見て確認したら見えないところにしまうというやり方のほうがよさそうです。

仕事の効率UPだけでなく、健康にもつながる脳の時間割に合わせた行動。次回は朝の過ごし方について詳しくご紹介していきます。

プロフィール:菅原洋平(すがわらようへい)

  • プロフィール:菅原洋平(すがわらようへい)

    作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。国際医療福祉大学卒。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。その活動は、テレビや雑誌などでも注目を集める。

    脳のトリセツ


編集:鈴木理香子

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