「ワーキングメモリ」を強化する実践脳トレ!

「最近、ど忘れやうっかりミスが多い」「やるべきことに集中できない……」
その原因は、脳の司令塔である「ワーキングメモリ」がうまく機能していないせいかもしれません。パズル作家であり、人が問題を解くときの「脳の仕組み」を研究してきた北村良子さんに、仕事のミスを減らし、スピードを高めるための脳トレ方法を教えてもらいます。最後に脳トレパズルにも挑戦!
仕事が早い人は「脳力」が高い
集中して作業をしているときに上司に「16時の会議までに資料のコピーを20部取っておいて」と頼まれたとしましょう。別の作業をしていてすぐに取り掛かることができないため、あなたは脳内の「記憶のメモ帳」である「ワーキングメモリ」に「16時までに20部コピーを取る」とメモを取り、再び元の作業に戻ります。ワーキングメモリは、このように少しの間だけ情報を脳内に保持する役割を担っています。
このとき、ワーキングメモリがうまく機能していないと、いざコピーを取ろうとしたときに「あれ、会議は何時からだったっけ?」「何部コピーを取ればいいのだっけ?」と、ど忘れをした状態になってしまいます。別の作業に集中したり、「今日のお昼ごはんは何を食べようかな」といった程度のことを考えるだけで、メモしたはずの情報が簡単に失われてしまうのです。
私たちの脳が実際に行っている仕事は、これ以上に複雑で多くの作業を並行しているので、ワーキングメモリは大忙しです。
例えば、仕事A、B、Cの3つを抱えているとしましょう。このとき、スムーズにABCの仕事をこなせる人は、仕事Aに100%の力を注いでいるように見えて、脳の無意識下では仕事BとCにも意識を向けています。ワーキングメモリの空き容量に余裕があるため、「バックグラウンド」で仕事BとCのことを考えることができるのです。また、ワーキングメモリの働きがよく、思考の切り替えもスムーズなので、BとCに意識を向けつつも集中してAに取り組む、というマルチタスクが可能になるのです。
このようにワーキングメモリを有効に使うことができれば、今よりも多くの仕事を短時間でこなすことができるようになります。同時に捉えておける情報量が増えるため、必然的に思考の幅や視野が広がり、人が話している内容や文章の要点も的確にとらえることができます。
ワーキングメモリは「整理する」「容量を増やす」の2軸で強化
ワーキングメモリを有効に使い、サクサクとマルチタスクをこなすためには、「ワーキングメモリを整理する」「ワーキングメモリの容量を増やす」の2軸で対策をとっていくことが有効です。
まずは、ワーキングメモリを整理しましょう。デスク周りを片付けて視覚から入ってくる余計な情報を減らしたり、ToDoリストにやるべきことを書きだしておいていったん忘れることで、ワーキングメモリの無駄な情報を消去できます。
また、今できることは後回しにせずにすぐに実行に移すことで、「あとでメールの返信をしなきゃ」などと余計な考え事をせずに済みます。今すぐにできないことは、ToDoリストにメモしましょう。
パズルでワーキングメモリを強化する!
ワーキングメモリを鍛え、蓄えられる情報量を増やすために最も有効なのは、新しいことに挑戦することです。以前から勉強してみたかったことを勉強したり、行ったことのない場所に出かけると、脳はこれまでの回路だけでは処理できずに活発に働き、成長することができます。
とはいえ、なかなか新しいことに取り組めない、という人におすすめなのが、パズルです。
パズルの魅力は、脳にとっての「新たな出会い」が圧倒的に多いことです。新しい問題に出会えば、ワーキングメモリは未知の問題を乗り越えようと、脳内からいろいろな解法を集め、思考を始めます。
パズルはゲーム感覚で解くことができるので、楽しく脳を鍛えることができます。「楽しい」と感じることは脳を喜ばせ、強く活性化します。手軽さ、効果、楽しさがそろったパズルこそ、ワーキングメモリを鍛えるための一番の方法だと考えています。
早速、パズルに挑戦してみましょう!
各目標時間は、あくまで目安として設定されています。目標時間が存在することで、脳は時間を意識します。それにより、脳は活発に働くようになり、集中力も向上します。
① 4つの数で10パズル(目標時間:3分)
□に演算子(+、-、×、÷)を1つずつ入れて、計算式を成立させてください。演算子は下のリストから選んでください。
10を目指して計算を繰り返すことで、計算力、集中力、試行錯誤力などが鍛えられます。たし算、ひき算、かけ算、わり算という簡単な計算を、短時間で幾通りも繰り返すことで、前頭前野を中心とした脳の広い範囲を活性化させることができます。
【答え】
マスの数と演算子が決まっているので、総当たりのように解いても解くことができますが、やみくもに組み合わせるよりも、少しでも手数が少なくなるように考えながら組み合わせることが解決のコツです。また、計算の順序(+と-より×と÷のほうが優先)も頭に置いて解く必要があります。
② スリザーリンク(目標時間:3分)
下記ルールに従って、1つのつながった線を引いてください
【ルール】
- ●と●の間に線を引きます
- 線は枝分かれや交差することなく、全体で1つの輪を作ります
- マスにある数字は、そのマスの何本の辺に線が引かれるかを表しています
書き込みを想定したパズルですが、この難易度であれば頭の中で解くことでワーキングメモリを鍛える効果が高まります。確実にわかるところから埋めていかないと間違えたまま進めてしまう恐れのある注意力と集中力が試されるパズルです。難易度が上がると、ここに線があるとすると、ここには線はないというふうに、数手先を読まないと解けないパズルになります。
【答え】
0とあるマスの周りには線がない、3であれば1か所だけ線がないといったわかりやすいポイントから攻めていくと突破口を見つけやすくなります。確実にわかるところ以外には線を引かないことが最大のコツで、推測で線を引いてしまうとどんどん間違えてしまい、気づいた時にはどこから間違えていたのかわからなくなってしまうかもしれません。
③ レベルアップ問題! ライトパズル(目標時間:10分)
ライトを触ると、そのライトと、上、下、左、右のライトが反転(点灯なら消灯、消灯なら点灯)します。すべてのライトを点灯させるためには、どのライトを触ればいいですか。
〇…点灯 ●…消灯
- ワーキングメモリを使うため、途中経過を紙にメモせずに解いてください。
頭の中でライトの動きを追うことで、一時的に記憶を保持する力を鍛えることができます。
最後の1回で消せるようにと考えることで、ゴールから逆算する思考回路も活性化します。
【答え】
1つライトを触ると周囲も同時に反転してしまうことから、最後にライトに触れる前はどのようになっているかを想像し、それに近づけるように考えていくと答えにたどり着けるでしょう。目標を設定し、それに向かって想像力を働かせながら試行錯誤をすることで、確実に答えに近づいていくことができるパズルです。
「ながら脳トレ」もおすすめです
運動には、凝り固まった脳をほぐす作用があります。きついトレーニングではなくても、ストレッチをしたり、10分ほど散歩をするだけで、停滞していた血流が循環して脳にも流れ込み、頭がよく回るようになります。
さらに、運動を脳トレーニングと組み合わせると、ワーキングメモリの強化に効果的です。
例えば、下記のような方法を試してみましょう。
- 歩きながらしりとりをする
- 足踏みをしながら3と5の倍数のときだけ手をたたく
- 歩きながら3~7桁くらいのランダムの数字を言い、直後に逆から再生する
複数人で行うと、コミュニケーションが活発になるためさらに脳が活性化するのでおすすめです。
パズルや「ながら脳トレ」で楽しく脳を鍛えることで、仕事の生産性が驚くほど上がることを実感できるでしょう。
企画・編集 株式会社エアリーライム パズル提供 北村良子 ライター 藤森優香
歩数管理して、運動習慣を身につけよう!

記録した歩数などは自動でスコアリングされ、ブレインパフォーマンスによい健康習慣を持続しているかを確認できます。
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