せっかく散歩をするなら「正しい姿勢」で! ストレッチで反り腰を改善

運動不足を解消するため、散歩を習慣にしている人は多いでしょう。でも、せっかく散歩をするなら、きれいで正しい歩き方をマスターしたいですよね。散歩するときの正しい姿勢を身に付けるには、どうすればいいのでしょうか。

「正しい歩き方は、意識するものではありません」

そう話すのは、パーソナルトレーナーの鈴木孝佳さん。なぜ歩き方を意識してはいけないのでしょうか? その真意と、正しい歩き方を身に付ける方法を解説していただきました。

歩き方を意識しても、「無意識」には変化が起きない

――普段歩いていると、どうしても猫背になったり足が疲れたりしてしまいます。散歩をする際の正しい歩き方を教えてください。

結論から言うと、歩くときに「意識を持たない」ことがもっとも重要です。望ましい歩き方を身に付けるためにも、意識を介入しないようにしてください。

――なぜ意識してはいけないのでしょうか?

意識と無意識では、脳のなかで働く場所が異なるからです。「背筋を伸ばそう」「歩幅を広げて歩こう」という意識は、前頭葉という場所がつかさどっています。一方、歩行や姿勢は無意識に行っており、その役目を担うのは小脳や脊髄、脳幹です。意識して前頭葉を使っても、無意識には変化が起きないのです。

したがって、姿勢を意識的に変えようとするのではなく、体の構造を理解し矯正することによって、正しい歩き方を身に付ける必要があります。

――散歩すると足がすぐ疲れてしまうのは、そもそも体の構造自体に問題があるということでしょうか?

足の疲れやむくみは、着地の仕方に問題があります。足の形をよくみると、かかとが丸みを帯びていますよね。そのまま地面に着けば、体が勝手に前へ移動するようにできているのです。これを「ロッカーファンクション」といいます。

ところが現代では、「健康のために歩いているけど、足首が痛くなる」という方がたくさんいます。そもそも足の着地が間違っているために、すぐ疲れたり、ふくらはぎがパンパンになったりするのです。

歩きイメージ

――かかとではなく、足のつま先から着地しているのでしょうか?

足の真ん中あたりで、ペタッと着地する人が多いですね。なぜそうなるかというと、腰が極端に反っている「反り腰」の状態だから。反り腰だと、かかとから着地することができません。

反り腰になると、背骨が緩やかな S 字ではなくなり、衝撃吸収が弱まります。つまり、背骨によるクッション性が弱くなるのです。その状態でかかとから着地すると、ドンという衝撃が脳まで伝わってしまうため、ストップがかかる。脳には「自分が吸収できる範囲でしか力を出さない」というルールがあるからです。

反り腰なのに無理やり歩幅を大きくしたり、かかとから着地したりすると、人によっては頭痛や肩こりが生じるかもしれません。

――まず反り腰を直さないと、いくら意識しても正しい歩き方にはならないのですね。

その通りです。「良い歩き方」の前に、「良い姿勢」を作ることが大事なのです。また、良い姿勢は良い呼吸から生まれるので、呼吸の仕方も重要になります。

反り腰を直すための簡単ストレッチ3つ

というわけで、鈴木孝佳さんに「反り腰かどうかを見極めるチェックテスト」と「反り腰を直すためのストレッチ」を教えてもらいました。

反り腰のチェックテスト1

  1. 壁を背にして立ち、かかと、おしり、頭を壁につける
  2. 腰と壁のすき間に手を入れる

手首まで入り、指が少し動く→理想の姿勢
手がズボっとひじまで入り、縦にスカスカと手が動く→反り腰

返り腰チェック1

ふくよかな人の場合、背中まわりのぜい肉によって、すき間がつぶれてしまうことがあるそうです。その場合は、チェックテスト2を試してみましょう。

反り腰のチェックテスト2

  1. 足の幅をげんこつ1つぶんくらい空ける
  2. 両腕を前に伸ばしてしゃがむ

背中を丸めてしゃがめる→理想の姿勢
しゃがめず、途中で止まってしまう→反り腰

また、足首が硬い人もしゃがむことができないので、足首の可動域のチェックにもなります。

返り腰チェック2

もし反り腰だった場合、どうすればいいのでしょうか? 反り腰を直すためのストレッチを3つ紹介します。

ストレッチ1:背中を丸めながら呼吸し、緊張をほぐす

ストレッチ1
  1. 四つんばいになる
  2. 肩の真下に手、お尻の真下に膝を置く。足の間隔は、げんこつ1つくらいの幅に
  3. 足のつま先を立てる
  4. 背中を天井に向けて丸める
  5. 「息を吐く」「息を止める」「鼻から息を吸う」を5秒ずつ、1分間繰り返す

ポイント:肩がすくみやすく、呼吸をしている間に背中が下に落ちてくるので注意する。背中とともに骨盤もしっかり丸めることを意識する。

ストレッチ2:太ももの後ろの筋肉を使い、骨盤を正常に戻していく

ストレッチ2
  1. あお向けに寝る
  2. 足の間隔は、げんこつ1つくらいの幅に
  3. 膝の角度を90度にする
  4. お尻、腰、背中の順にゆっくり持ち上げ、ゆっくり戻す
  5. 1回の運動につき10秒くらいかけ、繰り返す

  • 呼吸はとくに意識せず、楽に行う

ポイント:背骨を一つずつ動かすことを意識する。まっすぐお尻を上げてしまうと、反り腰のまま運動してしまうことになるのでNG。かかとの真ん中でしっかり地面を押す感覚を身に付ける。

ストレッチ3:足首の可動域を広げる

ストレッチ3
  1. 四つんばいになる
  2. 足のつま先を立てる
  3. ひざを伸ばしながら、お尻を上げる
  4. かかとを床に近づけていく
  5. 「息を吐く」「息を止める」「鼻から息を吸う」を5秒ずつ、1分間繰り返す

ポイント:ひざが曲がらないよう、伸ばした状態でかかとを下ろす。もし地面にかかとが着かない場合は無理せず、ふくらはぎが気持ちいい範囲で下ろしていく。すねの前の筋肉を感じ、筋肉の動きを脳に知らせることを意識する。

悪い姿勢のまま歩くと逆効果? 散歩をする際の注意点

――3つのストレッチを行うと、どのような効果があるのでしょうか?

反り腰が改善され、意識せずとも良い姿勢で歩けるようになります。

もし反り腰の人が悪い姿勢のまま歩くと、疲れやすくなったり、足がむくんだりします。また、スタイルの崩れにつながるかもしれません。なぜなら、体が整っていない状態で歩くと、悪い姿勢や歩き方をさらに学習することになるからです。そのまま散歩を続けると、左右のバランスが崩れる可能性もあります。

歩いたときに、右と左で聞こえる足音が異なる場合は要注意。その状態で歩き続けると、右半身と左半身で負荷の量が変わってしまいます。また右脳と左脳へ伝達する情報量に差が出てしまうため、人によっては頭痛や肩こりなど、他の健康問題へと発展してしまうかもしれません。

――健康のために散歩しているのに、悪い姿勢で歩き続けると逆効果になってしまうわけですね。

昨今のコロナ禍の状況で、運動不足になっている人は多いでしょう。そういう人が「少しでも運動しなければ」と考えるのは悪いことではなく、とても良いことです。でも、どうせ散歩するなら、より良い状態で歩いたほうがいいですよね。

歩く姿勢のイメージ

――では、歩くスピードや歩幅、時間についてはいかがでしょうか?

歩くスピードと歩幅はとくに意識せず、自然に歩ける感覚でいいでしょう。散歩の時間は、20~30分ぐらいが理想です。体を良い状態にした上で歩行を繰り返すと、脳が学習し、自然と良い歩き方が身に付いてきます。

――先ほど教えていただいたストレッチと、20~30分の散歩を繰り返せばいいわけですね。

はい。もし会社へ出勤されるなら、出かける前にストレッチを行い、体を整えてから歩くと良い効果が得られるでしょう。

散歩はケガをしない範囲で、気持ちよく歩くことがとても重要です。楽しく続けるためにも、紹介したストレッチを行い、姿勢を整えてから散歩することを心掛けてください。

反り腰を直し、意識せずとも「正しい姿勢」で歩ける状態を目指そう

「歩くスピードは? 歩幅は○○cm?」「散歩中に意識するべきことは?」といった疑問をお聞きするつもりでしたが、「むしろ意識してはいけない」という回答が返ってきて、とても意外でした。

「運動不足だから散歩しよう」と思っても、悪い姿勢で歩き続け健康を害してしまっては意味がありません。紹介したストレッチを取り入れ、意識せずとも正しい姿勢で歩ける状態を目指しましょう。

鈴木孝佳さん

  • 鈴木孝佳さん

    パーソナルトレーニングスタジオ「b{stoic(ビーストイック)」のヘッドトレーナー兼CTO。姿勢・スタイル・不調を改善する専門家として、トレーニングや食事、睡眠など健康にまつわる情報をSNSや動画配信サイトで発信している。


取材・文:村中貴士 編集:水上歩美(ノオト) 撮影:宗形裕子 モデル:大黒まりこ

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