【INTERVIEW】西澤明洋さんクリエイターの頭の中身に興味津々!Vol.2 前提条件を疑うことから始めよう

クリエイターって、一握りの“とびきりセンスのいい人たち”のことだと思っていませんか? 「すべての人はクリエイター」と言うのは、企業のブランディングデザインを専門とする西澤明洋さん。クリエイターは、どうやってすぐれたカタチや独創的なアイディアを生み出すのでしょうか? 第2回は、人とは違うところに気づくための思考の勘どころを教わります。

 

Vol.1『人は誰もがクリエイションをして生きている』

 

西澤明洋さんプロフィール

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にしざわ・あきひろ 株式会社エイトブランディングデザイン代表。経営にデザインの考え方を取り入れて、会社まるごとブランディングする「ブランディングデザイン」というジャンルを開拓してきた。関わったブランドはCOEDOビールやヤマサ醤油のまる生ぽん酢、堀口珈琲などの食品から伝統産業、農業機械、神社まで100を超える。自社で定期的に行うトークイベント「クリエイティブナイト」では、毎回第一線で活躍中のクリエイターをゲストに招き、幅広いクリエイティブの知識を発信している。

 

 

――前回は、建築家が設計する際の思考プロセスが、クリエイティブな仕事の仕方に応用できるというお話をお聞きしました。今回はより具体的に教えてください。

 

はい。前回、建築家はまず「与件(よけん)」の整理を行うということはお話しましたね。平たく言えば前提条件を漏らさず見つけていく作業です。施主の目的、土地、予算、期間、法律・・・建物を建てるための条件は一体何なのかを正しく理解すること。これが非常に重要な作業なんです。

与件が出揃ったら、目の前にある情報をつなぎ合わせて、どんな風に整理するか、とことん考えます。ちょっとパズルを解くみたいな感覚です。その整理の仕方で、アウトプットは変わります。建築のコンペでは、全員が同じ与件をもらっているのに、建築家によって全く違う設計図が出て来ます。そんな時は、つくづく「みんな“考えるクリエイティブ”をしているなぁ」と思いますね。あらゆるビジネスに、そんな「特殊解」があるはずだと思うんです。

 

――「考えるクリエイティブ」は、与件の整理から始まるわけですね。

 

ただし、出てきた与件をそのまま捉えてしまうと、良いクリエイティブにはなりません。

僕が考える「良いクリエイティブ」とは、「与件に新しい何かを加えることで、最大の成果を上げていくもの」です。もちろん昔からあるものにも、世の中に支持されている良いものはいっぱいあります。でも例えば有名な老舗の羊羹だって、実は時代に合わせて改善され続けています。現時点では最適な答えだとしても、それが未来永劫続くわけがありません。前提条件
を守るためだけにクリエイティブしていてはダメなんです。

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手織じゅうたん「山形緞通」のブランディングデザイン。地域に根差した伝統のものづくりも、新しい時代のニーズに応える必要がある。

 

クリエイターには、「疑う」という能力がある

 

――クライアントから示された前提条件であっても疑うのですか?

 

クリエイティブに仕事をしたいのなら、そうしてみるべきです。なぜなら、大抵の人は「前提条件はいじれない」と当たり前に考えていますから。

たぶん、業界の中でもアッと言われるような仕事をしているクリエイターたちには、既存のビジネスの“当たり前”をちょっと逆手に取ったり、違うやり方をやったりしているひねくれ者が多いはずですよ。

本当に良いクリエイティブをする人は、“前提条件を疑う”という能力を持っています。そして、疑ったとき、そこに“未条件”を挿入することができるかどうか。

 

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――未条件ですか?

 

建築でいう“与件”とは、お客様や社会が課題として持っているものなど、すでに分かっている条件です。それをそのまま整理して解くのではなくて、ちょっと新しい条件=未条件をプラスしてあげることで、複雑な問題をスパッと解決に導くスルーパスのようなアイディアが出ることがある。そこにクリエイションがあるわけです。

それが狭い範囲であれば「改善」ですし、規模が大きくなれば「イノベーション」を生み出します。

 

僕は自社(エイドブランディングデザイン)で定期的に「クリエイティブナイト」というトークイベントを開催しているのですが、以前それに登壇してもらったNOSIGNER代表の太刀川英輔さんがイノベーションについて語ったことがとても印象的でした。

イノベーションとは「カレーうどん」のようなものなのだと言うのです。

日本ではイノベーションというと「技術革新」のように考えられていますが、本当は、何かと何かを組みあわせた、「新結合」を意味します。「カレー」と「うどん」、どちらも昔からありましたが、この2つを組み合わせた人はいなかった。誰かが両者を結合させたことで、既存のカレー業界とうどん業界のどちらも棄損することなく、「カレーうどん」という新しいジャンルを生み出し、業界全体としてはパイを増やし、価値を増大させたというわけです。なるほどなぁと思いましたね。

 

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――確かに「カレーはナンやライスで食べるもの」という前提では生まれない発想ですね!

 

みなさんもご存知の世界的通販サイトは、「本は本屋で買うもの」という当たり前を破って、ネット販売で大成功しました。某有名書店は、本を売ることから、本屋に滞在する時間に価値をシフトさせましたよね。言われてみれば当たり前のことでも、枠に囚われていたら、そのことになかなか気づけないものです。

 

「時間の流れ」と「トレンド」で文脈を読み解いてみる

 

――だから新しいサービスが始まると、みんなアッと驚くわけですね。与件を疑うためにも、まずは与件の整理をする必要がありそうです。

 

そうです。その与件を整理するときに活用できるのが、「文脈を読む」という建築的なアプローチです。

建築には、二大文脈というのがありまして、1つは「土地」の文脈です。お客様が家を建てたいというのは「現在」~「未来」にかけての話ですね。でも、その土地は、もともとどんな土地だったのかという「過去」も建築家は見なければいけません。例えば津波が何度も襲っていた場所には建ててはいけないわけです。災害、風習、近隣関係、いろんな過去からの文脈を汲んで建てることが望ましい。

 

――与件を時系列で読み解くわけですね。

 

そう。土地にまつわる文脈ですね。そして、もう1つが「トレンド」という文脈です。

建築物は、個々には所有者がいますが、その集合が街の景観やライフスタイルなどの時代性を作っていくものです。だから建築家には「社会性の意義」を考えるという使命感が埋め込まれていて、常に新しい建築を提起したいと思っています。

それは単純に見た目のカッコよさじゃないんです。例えば、木造からレンガ造りへの工法の変化がひとつのエポックを作りましたし、鉄筋コンクリートや鉄骨造でも建築はガラリと変わりました。構造躯体が変わることで建築様式が変わり、デザインが変わるんです。建築家であれば、今の建築トレンドを意識しながら、そのトレンドを「更新」させることも考えるわけです。

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港区南青山に立つエイトブランディングデザインの自社ビル。

 

――流れを見ることで、デザインやサービスの変化の方向性が分かるということでしょうか。

 

はい。よく人工知能の進化によって、10年以内に今ある職業の何割かがなくなってしまいますよ、みたいな議論がありますが、それは当たり前ですよね。永遠に同じものなんてないんですから。確かに情報技術の進化のせいで変化のスピードは早くなっていますが、今までだって古い職業が新しい職業に更新されてきたわけです。

10年後を予測したいのなら、昔はどうだったのか、なぜ今こうなっているのか、それは未来にどうつながっていくかという文脈を読む必要がある。今ばかりを見ず、文脈を読むというアプローチをすると、視野を広げたり、より深く問題にアプローチしたりすることができると思います。

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福岡天神に鎮座する「警固神社」。400年ぶりの社紋変更をおこない、歴史あるお社を後世に伝えるためのブランディングをおこなった。

 

――クリエイティブな仕事をするために、与件を整理することの大切さがよく分かりました。

 

要はリサーチですよね。ここが思考停止になっていると、あらかじめ整理された与件を渡されて「これでお願いします」「はい分かりました」になってしまう。

僕の肌感では、お客様の考えてくる戦略というのは、ほぼ正しいんです。そうだとしても、僕らは与件の整理をきっちりとやります。すると、最初の戦略から10~20%くらいは変わるんですね。この10~20%変わるということがとても大事なんです。誰も考えつかないことが、ここで生まれるんだと思います。

与件は受け止めたうえで、まずは「本当にこの与件でいいのか?」と考えることから始めてみてください。

 

次回は、「コンセプト」のまとめ方についてです。ご期待ください!

 

企画・編集:株式会社エアリーライム ライター:山田恵子

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