脳が疲れたら、一人でお茶を点てて飲む「独服」でひと休みしよう

考えごとをしたり、周囲に気を遣ったりと、忙しない日々。疲れが溜まり、気づけば身体だけじゃなく頭まで重く感じることも……。

そんなとき、コーヒーや紅茶を飲みながらほっと一息つくのもいいけれど、お抹茶を点(た)てて一服飲んでみるのはいかがでしょうか?

実は、筆者は茶道を習っているのですが、稽古に行って抹茶とお菓子をいただくと、不思議と心も身体もリフレッシュできる気がします。茶道には禅の精神が紐付いているので、それが関係しているのかも。

ということで、茶道教室を開いているお寺に伺い、茶道と禅のつながりや、お茶を点てるときにそろえるべきものについて教えてもらいました。

寺のご住職に伺う、現代に茶道をする意義

東京都・広尾にある祥雲寺

今回は、東京都・広尾にある祥雲寺に伺いました。祥雲寺では、茶道体験ができる催しのほか、ご住職によるお茶の稽古も行われています。

お話をしてくださったのは、ご住職の岩崎宗瑞さんです。

岩崎宗瑞さん

──茶室に入ったときや、お茶を点てているときの、あの「整う」感じって何なんでしょう?

茶道は、禅とのつながりがとても深い日本文化です。禅僧によって広められてきたルーツがあるので、座禅に近い感覚があると思います。

自分と向き合って整えていくのが座禅なら、客と亭主という立場があり、相手と向き合う中で精神を磨いていくのが茶道かもしれませんね。

──ほっと息抜きをする「ティータイム」と比べ、茶道には座禅のような「精神統一」の要素が含まれているということでしょうか?

そうかもしれませんね。また、その時々の季節と密接に関係している点も忘れてはなりません。

今年は特に、あまり積極的に外に出ることができないからこそ、季節の喜びを感じにくいかもしれません。床の間の掛け軸やお花などのしつらえ、時期にあったお菓子、茶道具の取りそろえなどで四季の移ろいを楽しむのも、茶道の醍醐味ですね。

岩崎宗瑞さん対面

──茶道に興味を持つ人が、家でお茶を点ててみたいと思うときは、どうしたらいいのでしょう?

望ましいのは、一度「本物」を体感して、茶道の世界観を頭の中にイメージできる状態をつくること。

茶道には、「市中の山居」という言葉があります。これは、日頃の生活とは切り離された空間として茶室が存在しているということ。だからこそ、自宅でやってみるには、そのイメージがまず必要ですよね。

とはいえ、いきなり稽古に通ったり、茶会に参加したりするのは勇気がいることです。このご時世ですから、人が集まる場所に行きにくいこともあるでしょう。そんなときは、家で一人でお茶を点てて、茶道の雰囲気を味わってみてもいいかもしれませんね。

──たしかに、まず本物を知るのは大切ですね。お茶を一人で用意して自分のために飲む、という行為は、「もてなし」を重視する茶道の世界でもあるものなのでしょうか?

茶道には、客を迎え入れる前や、茶会が一通り終わったあとに、亭主が自分のためにお茶を点てて、一人で飲む「独服」というものがあります。「あぁおいしいな」「いいお茶碗だな」と目の前のことだけに集中する時間を作ることは、忙しいときこそ大切だと思います。

──家でお茶を点ててみたいときに、最低限用意するべき道具があれば教えていただきたいです。

まずは茶筅(ちゃせん)ですね。茶碗は代用もできるのですが、茶筅はきちんとしたものを用意しましょう。

というのも、お茶は本来、中国や朝鮮などの伝来物を茶入(ちゃいれ)や茶碗に「見立てて」使っていたのですが、お茶を点てるときに使う茶筅は、そうはいかないので。

──なるほど。ではひとまず茶筅は、きちんとしたものをそろえてみます!

一人でお茶をいただく「独服」に挑戦

ということで、お家でお茶を楽しむために必要な物を準備し、「独服」にチャレンジしてみることに。

まずは、茶筅と抹茶、和菓子を買いに行き、独服に備えます。抹茶と茶筅は、百貨店のお茶屋さんで手に入りました。お茶屋さんや茶道具店のオンラインショップなどでも買うことができます。

茶器1

お茶碗は今回自宅にあるものを使ったのですが、ない場合はこちらも百貨店やオンラインショップで、お手頃にそろえることも可能です。

そして和菓子は、ぜひ和菓子屋さんに足を運んで「季節の生菓子はありますか?」と聞いてみてください。

和菓子

こんな風に、和菓子職人の方が季節に合わせて趣向をこらした、美しいお菓子に出逢えるのです。

あとは、抹茶の入った茶碗にお湯を注ぎ……

お茶を注ぐ

お茶碗に手を添えて、シャカシャカと茶筅を縦に振っていきます。

抹茶を点てる

お湯と抹茶が調和して、表面が程よく泡立ったら、

お茶を飲む

ごくり。

抹茶の苦味とあたたかい温度が身体の奥まで染み渡りました。

なじみの部屋で丁寧にお茶を点てて飲む、なんだか不思議な感覚です。

お菓子とお抹茶のおいしさに心がほぐれるのはもちろんなのですが、お湯を注いで茶筅を振っている最中は、日頃の考えごとなども忘れて、まっさらな気持ちになれました。

凛とした一服で気持ちを整える

茶器2

今まで、一人でお茶を点てて飲む、なんてことはあまりしてこなかったのですが、この機会に和菓子や茶筅をそろえたり、部屋を片付けたりしながら、自分の心が落ち着いていく感覚がありました。

「独服」に似合う環境を少しでも整えようと思うと、忙しさを理由におろそかにしてしまっていたあれこれに気付かされます。

季節を感じ、静けさの中で茶筅を振ると、ほのかに匂い立ってくる抹茶の香り。

いっぱいいっぱいになって脳が火照っているような疲れを感じるときこそ、凛とした一服でスッと気持ちを整え、リフレッシュすることも大切なのかもしれません。祥雲寺のご住職が教えてくださったように、茶道と禅のつながりが深いことも改めて腑に落ちました。

そして、自宅でやってみるとやっぱり、本物の茶室でお茶をいただくときに感じるパワーの計り知れなさを実感します。その日に合わせて選ばれた茶花や掛け軸、素敵な茶道具に、茶人の先生が話してくださるお話。本物のお茶の世界は、自宅とはまた違う価値があります。

もしお茶に関心を抱いてくださったなら、ぜひ、本格的な茶道の世界にも少し足を踏み入れてみてほしいです。

一人でお茶を点てて飲む「独服」。忙しい日々の中でふと立ち止まり、脳の疲れが癒やされるのを体感してみてください。


取材・文:山越栞 企画・編集:水上歩美(ノオト) 写真:井上依子

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