認知症とはどんなもの? 病気の原因と特徴

認知症は、いまや国民病ともいえるほどの身近な病気。そもそも認知症とは、どんな病気なのでしょうか。

知っていますか? 認知症のこと

「老化によるもの忘れ」とは別物です

認知症とは、何かの病気によって起こる症状や状態の総称。老化によるもの忘れとは別物です。

誰でも年齢とともに、もの覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。こうした「もの忘れ」の多くは、脳の老化によるもの。一方で認知症は、何かの病気によって脳の神経細胞が壊れてしまうことが原因です。認知症が進行すると、だんだんと物事の理解力、判断力がなくなり、社会生活や日常生活に支障が出るようになります。

●老化によるもの忘れと認知症の違い

●老化によるもの忘れと認知症の違い
※アルツハイマー型認知症の場合

認知症は「誰もがなりうる病気」です

誰にとっても身近な認知症

日本では、2012年の時点で認知症の人が約462万人いるといわれています(※1)。その数が時代とともに増加すると仮定した場合、2025年には650~700万人になると予測されています(※2)。

認知症の高齢者人口

先のデータでは、2012年時点で65歳以上の高齢者のうち、認知症患者の割合は15%(約462万人)だと推計されています。また、認知症を発症する前段階とみられる軽度認知障害(MCI)の高齢者は13%(約400万人)と推計されました(※1)。つまり、高齢者の4人に1人は認知症、あるいはその前段階にあったということです。

別の調査では、2018年時点で高齢者の約7人に1人は認知症だとわかりました。さらに、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています(※3)。

※1「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成23年度~平成24年度厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業)

※2「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)」

※3 日本医療研究開発機構 認知症研究開発事業「健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究(研究代表者二宮教授)」において開始時に悉皆調査を行った福岡県久山町、石川県中島町、愛媛県中山町のデータ解析の当初の結果

東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授/同大学精神神経科・メモリークリニック 診療部長 繁田雅弘

認知症にはどんな症状がある?

もの忘れだけではありません

認知症の症状は、もの忘れだけではありません。記憶したり、集中したり、判断したりする脳の機能(認知機能)が衰えることで、さまざまな症状があらわれます。どのような症状があらわれるかは、個人により異なります。

認知症の症状

認知症の原因には、どんな病気がある?

3大認知症の原因と症状

3大認知症の割合

認知症の原因となる病気はさまざまです。原因によって、出やすい症状が異なります。最も多いのは「アルツハイマー型認知症」で、「レビー小体型認知症」「血栓性認知症」と併せて「3大認知症」と呼ばれています。

●3大認知症の特徴

3大認知症の特徴

治るタイプの認知症もあります

特発性正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症などの病気が原因で認知症の症状がでている場合は、早い段階で治療するともとの状態に戻る可能性があります。こうした治るタイプの認知症を見つけるためにも、早期診断が大切です。

認知症はどのように進行する?

アルツハイマー型認知症は、年単位でゆるやかに進行します

アルツハイマー型認知症は、年単位の時間をかけて徐々に記憶力、理解力、判断力が低下し、日常生活に支障をきたしていきます。経過には個人差がありますが、特に高齢者では、短期間で目に見えて症状が進むことはごくまれです。急に悪化する場合は、治るタイプの認知症も含め、別の原因が考えられます。

アルツハイマー型認知症の進行

アルツハイマー型認知症の研究により、認知症の症状が出る10~20年前から、脳の中に異常なたんぱく質(アミロイドベータ)がたまり始めることがわかっています(※4)。認知症を発症するずっと前から、脳の病的な変化はゆっくりと進行しているわけです。

認知症と診断されるのは、もの忘れなどの症状があらわれ、やがて生活に支障をきたしてからのこと。その後も脳内は変化を続けますが、その日から突然、できていたことができなくなるわけではありません。

※4 Sperling RA et al.: Alzheimers Dement 2011; 7(3): 280-292

レビー小体型認知症は、調子の良いときと悪いときを繰り返しながら進行します

レビー小体型認知症の症状の進み方

レビー小体型認知症の症状は、老化によるもの忘れが進むとともに、調子がよいときと悪いときを繰り返しながら進行します。認知機能には時間帯や日によって変動がありますが、次第に低下します。

血管性認知症は、急に発症し、階段状に進行します

血管性認知症の症状の進み方

血管性認知症の症状は、老化によるもの忘れが進むとともに、階段状になって進行します。脳出血や脳梗塞の後、急激に発症。その後は、脳出血や脳梗塞を起こすたびに症状が段階的に進行していくことが多いです。

認知症はどのように始まる?

認知症の前段階「軽度認知障害(MCI)」とは

認知症の症状が明らかになる前に、「何かおかしい」「以前とはどこか違う」と感じる人が多いようです。「以前より認知機能の低下はあるものの、認知症ではない状態」を軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)と呼びます。

認知機能(記憶力や判断力など)が以前に比べて低下していると、自分自身や周囲の人が感じている。しかし、日常生活に支障が生じるほどの大幅な低下ではなく、認知症の診断には至らない。こうした軽度認知障害(MCI)の人は、2012年の時点で日本国内において約400万人いると推測されています(※5)。

※5 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(H25.5報告)

軽度認知障害(MCI)の原因と症状

旅行の計画を立てる、明細書の整理など細かな金銭管理を行う、現在服用している薬を管理してきちんと飲む……。軽度認知障害(MCI)の人は、こうした複雑な作業に時間がかかったり、軽い支障をきたしたりすることがあります。原因はさまざまで、どのような症状があらわれるかは個人によって異なります。

軽度認知障害(MCI)から健康な状態に戻る場合もあります

軽度認知障害(MCI)は、さらに認知機能が低下して認知症に至る可能性がある状態といわれています。ただし、必ず認知症を発症するわけではなく、原因によっては現状が保たれたり、回復したりすることもあります。これまでさまざまな研究がなされており、1年間で16~41%の人が健康な状態に戻ったとの報告もあります(※6)。

加齢と認知機能(イメージ図)

※6 認知症疾患診療ガイドライン2017,「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会, p147, 2017, 医学書院


出典:相談e-65

編集:有馬ゆえ、水上歩美(ノオト)

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