【INTERVIEW】西澤明洋さん クリエイターの頭の中身に興味津々!Vol.1――人は誰もがクリエイションをして生きている

クリエイターって、一握りの“とびきりセンスのいい人たち”のことだと思っていませんか? 「すべての人はクリエイター」と言うのは、企業のブランディングデザインを専門とする西澤明洋さん。クリエイターは、どうやってすぐれたカタチや独創的なアイディアを生み出すのでしょうか? 西澤さんに、クリエイティブな思考回路を分かりやすく教えていただきます。

西澤明洋さんプロフィール

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にしざわ・あきひろ 株式会社エイトブランディングデザイン代表。経営にデザインの考え方を取り入れて、会社まるごとブランディングする「ブランディングデザイン」というジャンルを開拓してきた。関わったブランドはCOEDOビールやヤマサ醤油のまる生ぽん酢などの食品から伝統産業、農業機械、神社まで100を超える。自社で定期的に行うトークイベント「クリエイティブナイト」では、毎回第一線で活躍中のクリエイターをゲストに招き、幅広いクリエイティブの知識を発信している。

――たくさんのクリエイターと交流されていますね。西澤さんは「クリエイター」とはどんな人たちのことだと思いますか?

皆さん「クリエイター」と聞いて思い浮かべるのは、おそらくカッコいいデザインや芸術的な造形物を生み出す感性豊かな人たちなのではないでしょうか。でも、クリエイターってもっと幅広い概念ですよね。

僕は、クリエイティブには「感じるクリエイティブ」と「考えるクリエイティブ」の2種類があると考えています。いわゆるセンスが良くて、美大や音大を出たような人たちがつくるものは「感じるクリエイティブ」の方。これが狭義のクリエイティブだとすると、もう一方の「考えるクリエイティブ」というのは、たとえば経営をデザインしたり、新しいビジネスモデルを生み出したり、世の中にイノベーションを起こしたりするような、広義のクリエイティブです。どちらも「クリエイター」だと思います。

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――ビジネスをデザインする人もクリエイターの範疇ですか?

そもそも、すべての人は、何かをクリエイトしながら生きていますよね。どうも日本人は「感じるクリエイティブ」ばかりを評価しがちです。美大生はスケッチが上手いですが、それは練習して学んでいくもの。そのようなテクニックによって生み出されるものがクリエイティブだと、みんな漠然とそう思っている。

日本の教育の影響でしょうね。僕には小学生の子供がいますが、美術の授業ではいまだに「絵が上手い/下手」という評価軸で教えられている。本当は、その評価軸を自分で考えるところがクリエイティブの本質なんじゃないかと思います。

――「表現すること」だけが「クリエイティブ」ではないと。

自分もロゴやパッケージのデザインをしている人間ですが、誤解を恐れずに言うと、「感じるクリエイティブ」だけのデザインは表層的なんじゃないかなと思うことがあります。センスのいい人が「こんなものを作ってほしい」という求めに応じて、それっぽく、センスよく表現していく。それを見て、依頼する側も「あ、いい感じですね!」と納得する。つくる側も依頼する側も、「感じるクリエイティブ」をリスペクトしすぎて、思考停止に陥っている気がします。

もちろん、デザイナーの仕事の8割は表現です。大部分の時間を、手を動かしながら、感じながら、かっこいい色、形、デザインをつくっていく。けれど2割ぐらいはグッと考えなければならない。そもそもこのデザインは何のために必要なのか? 問題を解決するデザインになっているのか? モノゴトの根っこ、問題の源流を追っていくような思考が背景にあると、アウトプットの形が違ってきます。考えることをせずに、注文通りに“いい感じ”に仕上げるだけなら、デザインとしては表層的だと言わざるを得ません。

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クラフトビール「COEDO」のブランディングデザインでは、工場見学に始まり、競合各社のコンセプトやパッケージデザインなど市場動向から徹底的にリサーチした。

――「考えること」がクリエイティブの出発点ということですね。

例えば、お客様の声を受けるコールセンターのオペレーターという仕事を考えてみます。ただ教えられたマニュアル通りに話すだけでも、業務は成立するでしょう。けれど、声の出し方に気を付けてみたり、相手によって話し方を変えてみたり、何らかの問題意識を持って改善していけば、オペレーションの質は上がっていくし、業務成績も上がるはず。さらに、直接お客様の生の声を聞ける立場から、経営側が気づいていないニーズを発掘して提案することだってできるかもしれない。上手く仕事をするのも大事なことですが、根っこから「考える」ことで、どのような仕事ももっとクリエイティブになると思います。

企画書の起案、イベントのプランニング、オリジナルな営業スタイル。あらゆるビジネスシーンに、個人のクリエイティビティを発揮するチャンスはいくらでもあるのです。

アイディアを見つけたいなら、建築家のように考えてみよう

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エイトブランディングデザインで開催しているクリエイティブナイトの一コマ。

――西澤さんは、ブランディングデザインをするとき、どのように考えているのですか?

実は、僕が大学で学んだのは、デザインではなくて建築でした。新卒で大手電機メーカーにプロダクトデザイナーとして就職し、独立してから独学でブランディングデザインという分野に取り組んできました。日本でブランディングデザインを扱い始めたパイオニアです。

ブランディングデザインを一言で言うなら「経営のデザイン」です。経営者と対話を重ねながら問題の源流まで遡って、経営という広義のデザインを考え、ロゴやパッケージという狭義のデザインへと落とし込んでいく。そのアプローチは、従来のグラフィックデザインとも、経営コンサルティングとも異なります。僕の場合考え方のベースは、建築的思考プロセスです。

そして面白いことに、今、様々な分野でクリエイティブに活躍をしている人に建築系出身者が多いことに気が付きました。それで、建築系出身だけれど建築以外の新しい分野を開拓した方々を対象にインタビューを行いました。案の定、みんな建築の考え方を使って、ビジネスをクリエイトしている。「建築的な思考法とは、アイディアを実現させるプロセスなのだな」と確信しました。この考え方については『アイディアを実現させる建築的思考術』(日経BP社)という本にまとめています。

クリエイションは、「前提条件」の発見から始まる

――建築家の思考プロセスのどこが特別なのですか?

建築家とは、すべてに責任を負わなければいけない職業です。例えば家を建てるとなると、すごくお金がかかりますから、施主さんは人生をかけているといっても過言ではありません。だから建築家は、最高にいいものを提案しようとします。そのために考えるのはデザインのことだけではありません。予算、土地の条件、施主が望むライフスタイル、家族構成、建築資材、工法、施工業者、土地・建物に関する法律などなど、あらゆる前提条件を把握しておく必要があります。これを建築では「与件」と言って、必ずすべての与件をテーブルの上に乗せて考えるところから仕事がスタートします。つまり、ある課題に対して「部分」だけを考えるのではなくて、常に「全体」から考える。課題の根っこを徹底的に考える。その上で徹底的に手を動かす。「考えるクリエイティブ」と「感じるクリエイティブ」を何度も往復しながらデザインをつくり上げていきます。これが建築というクリエイティブの最大の特徴だと思います。

――問題に丸ごと関わる建築を学んだ西澤さんが、プロダクトデザインからブランディングデザインへと軸足を移したのも、自然な成り行きだったんですね。

僕だけでなく、建築を学んだクリエイターの多くが、そういう仕事の仕方をしていますね。手を動かす前に、とことん考える。そこに真のクリエイティビティがあると思います。そして、それはどんな仕事にも応用可能なクリエイティブだと思います。

次回は、クリエイションを生み出す建築的な考え方について、具体的にお聞きしていきます。

企画・編集 株式会社エアリーライム ライター 山田恵子 カメラ 佐竹伸一(エイトブランディングデザイン)

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