【シリーズ】プロフェッショナルのパフォーマンス論Vol.2 古屋晋一さん 第2回

音楽と脳の不思議な関係(全2回)

第2回 パフォーマンスを上げるための効果的な省エネ法

音楽と神経科学の関連を研究するソニーコンピュータサイエンス研究所の古屋晋一さんインタビュー。第1回は、音楽を聴いたり演奏したりする時の脳の働きは、右脳だけでなくボーダレスに連携しているというお話しをお聞きしました。第2回はプロの演奏家の省エネ術に学ぶパフォーマンスの上げ方についてお伺いします。

(第1回はこちら)

プロは無駄な動きはしない

古屋さんの著書『ピアニストの脳を科学する』には、︎“ピアニストの省エネ術”という章があります。省エネの定義は「同じように質の高い音楽を、より少ないエネルギー消費量で創り出すこと」。ピアニストにとってとても大切なことですが、これはプロのビジネスパーソンにとっても重要なキーワードなのかもしれません。

「なぜピアニストに省エネ術が必要かというと、90分にも及ぶような長い演奏の中で、最高のパフォーマンスを続けるためにはそうせざるを得ないということです。短距離走者なら省エネは必要ない。全力で駆け抜ければよいのですが、長距離走者はそうはいかないですよね。何が必要かということを考えた結果の戦略ともいえると思います」

ピアニストが毎日4時間練習したとすると、1年間で手が移動するおおよその距離は「490キロメートル」になるそうです。

「筋肉には速筋と遅筋というのがありますが、疲れにくい遅筋が多いのがピアニストの特徴なんです。つまり、何を最適化するかということですね。長期的に良いパフォーマンスを続けることを念頭に置くと、どう省エネするかということは絶対の答えになると思います」

ビジネスパーソンも休憩の取り方が大切

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「僕も仕事をする上で意識していますが、瞬発的に能力を発揮することが必要な時もあるけれど、1日を通してきちんと成果を出すためには、無駄なことをしないというのは大事な考え方じゃないかなと思います」

自分の仕事の目的をはっきりさせる、優先順位をはっきりさせることが重要と古屋さんは語ります。

「ここぞという時に動き、あとはうまく休む。演奏家は疲労のリスクをよく知っているんですね。疲労してしまうと同じ力を発揮し続けることができなってしまい、パフォーマンスが落ちることを。筋疲労と神経疲労は長期間続きます。それなら“疲労させない”というのが、プロの心得なんですね」

休憩や睡眠を大切にし、脳を活性化させる

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ビジネスパーソンが自分のパフォーマンスを上げるため、脳を活性化する方法はあるのでしょうか?

「休憩をこまめに取ることは重要だと思います。よく言われることですが、脳の記憶が定着するのは、休んでいる時、何もしていない時なんですね。自分がインプットしたことを脳の中に定着させることは重要なことです。ヒトの記憶は短期記憶から長期記憶に移行して定着する時に、一気に移行するわけではありません。少しずつしか移っていかないんです」

短期記憶にある状態(定着していない状態)で、次のものを入れてしまうと、先にあったものが出ていってしまい、定着しないこともあるそう。

「Aと Bを2つのものを一度に頭に入れると干渉し合います。Aを入れて、一旦休憩して、Bに取り組むというのがいいのではないかと思います。2つを一気に覚えられなくなると、結局、先に頭に入れたことを忘れるという犠牲を払わなくてはならない。つまり、詰め込み学習はあまり意味がないということですね、笑。こまめに休憩を取る人のほうが、結果的には、たくさんのことを長期間覚えることが得意だと言えると思います」

 

自分なりの省エネ法を編み出すことのすすめ

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睡眠も記憶の整理や結合、そして短期記憶から長期記憶に移行を促すのに大切な時間だそうです。眠りから覚めたばかりの朝に、勉強や仕事をするのは理にかなっているのでしょうか?

「朝は脳がフレッシュな状態になっているので、効率は良いと言えますね。可能なら昼寝なども上手に取り入れられれば効果的だと思いますが、日本ではなかなか難しいですね」

古屋さんがご自身で行っている方法などがあれば教えてください。

「研究者は常に新しいことを発想しなければならないので、1日のうち少しでもクリエイティブな時間が無いと,大きな問題になります。そのための意識的な省エネは必要だと思っています。休憩は大事にしていて、1時間仕事をしたら5分は取るようにしています。睡眠は6時間半以上取るようにしていますね。それ以下になるとパフォーマンスが落ちます。これはあくまでも僕のデータなので、科学的な裏付けはありません。個人差があるので、自分なりの省エネ法を考えてみると良いと思います」

上手に休憩して、自分のパフォーマンスを上げること。日々の仕事の中で意識したいものです。

古屋晋一(ふるや・しんいち)

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音楽演奏科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)アソシエート・リサーチャー、上智大学音楽医科学研究センター センター長,ハノーファー音楽演劇大学 客員教授を兼務。京都市立芸術大学、東京音楽大学、エリザベト音楽大学にて非常勤講師。大阪大学基礎工学部卒業後,同大学大学院人間科学研究科,医学系研究科を経て,博士(医学)を取得。ミネソタ大学神経科学部,ハノーファー音楽演劇大学音楽生理学・音楽家医学研究所にて勤務。脳科学や身体運動学の手法や考え方を用いて、音楽を愛するすべての人の健やかで創造的な演奏活動を支える「音楽演奏科学」の確立に力を注いでいる。

編集:株式会社エアリーライム ライター:菅野和子 カメラ:新山貴一

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【シリーズ】プロフェッショナルのパフォーマンス論Vol.2 古屋晋一さん 第1回

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