【シリーズ】プロフェッショナルのパフォーマンス論 Vol.3 井出有希さん 第1回

悩みをチャンスに変える決断力と行動力(全3回)

1回 起業の原点と、決断への原動力とは?

 

栄養士や調理師などホームシェフのサブスクリプションサービスを提供する「株式会社シェアダイン」。食の専門家が、各家庭の食卓のニーズに合わせて献立を提案し、食の悩みを解消するという独自のマッチングサービスが話題をよび、売上を伸ばしています。このビジネスを、2017年に共同代表である飯田陽狩さんと立ち上げた井出有希さん。どんな思いで起業を決断し、ビジネスを展開したのでしょうか。第1回目は、「起業の原点と、決断への原動力」についてうかがいました。

尽きることがなかった食の悩みをビジネスに転換

東京大学経済学部卒後、大手外資系証券会社、資産運用会社勤務を経てボストンコンサルティング グループでアナリストとして活躍していた井出さん。結婚し、第2子を出産して2ヶ月を過ぎたころのことです。同じ会社のママ社員で “同志”でもある飯田さんからランチに誘われ、「一緒に起業しませんか?」と、現在のシェアダインの源である事業計画書を渡されたそうです。

「起業と聞いて驚きました。でも、彼女が考えた、『家庭ごとに異なる食の悩みやニーズに、食の専門家がきめ細やかに応じる』という事業コンセプトは、まさに私自身の悩みに直結するものでした」

働く母としての食の悩みと、ビジネスが結びついた瞬間だったと、井出さんは振り返ります。

妊娠・出産を機に食生活を見直し、原材料やバランスなどを意識するように。育休復帰後は時短勤務しながら、食事は手づくりを心がけていたそうです。

「でも、平日は慌ただしくて帰宅後にじっくりご飯を作る余裕がなかったり、メニューがワンパターン化してしまうせいか子どもが決まったものしか食べなかったりと、食の悩みは尽きることがありませんでした。飯田を含めママ社員の間でも、仕事の合間の話題に上るのは『食』のことが断然多かったですね」

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<写真は一例。3時間で12品程度、4日分の作り置きができる>

 

 

アナリストとして調査し、潜在的なニーズを確信

 

飯田さんからの起業の誘いを前向きに受け止めつつも、「価格設定などを考えると、ビジネスとして成り立たせるには難しいのではないか」「居心地の良い今の会社を辞めてまで、私がやるべきことなのか」など、「もやもやっとした迷いもありました」という井出さん。

そこでまず考えたのが、潜在的なニーズ。自身が子育て中で、「こんなサービスがあったら真っ先に利用したい」という気持ちが強かったことに加え、アナリストの視点で周囲のママを見渡しました。

「どんな料理を作れば子どもが食べてくれるのだろうか」といった食の悩みを抱えつつも、ベビーシッターや家事代行など、仕事と育児の両立のために「外部のサービス」を利用する人が多く、「勝算あり」と分析。

さらに、“市場調査”も兼ね、出張サービスの担い手となる予定のシェフの一人の方に現在のシェアダインのサービスと同じ3時間の時間で我が家の食の悩みに沿ってお料理を作っていただきました。

「保育園の調理師としての勤務経験を持つ方に来ていただき、離乳食を中心に作ってもらったんです。当時、下の子は生後8カ月。私があんなに苦労した離乳食作りを手際よく行うシェフの姿、完成した野菜スープを娘がおいしそうに全て飲み干し、入っていたお野菜をパクパク食べる姿を見て、『これならビジネスとして成り立つ!』と実感しました」といいます。

金融系の会社に勤めるご主人の、「アメリカでは、(事業に)失敗するほど信用がつき、お金を貸してもらえて結果的に成功するんだよ」という言葉にも後押しされ、起業を決意しました。

振り返りの時間を作って、頭の中を整理する

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「スタートアップ企業を手助けするアクセラレータープログラムに採択され、順調なスタートを切ったものの、資金調達がうまくいかない、サービスの担い手である料理家がなかなか集まらない、外部に委託したシステム開発が遅れるといった試練の連続で、サービスがなかなか開始できませんでした。プレッシャーの中で仕事をすることには慣れていましたが、それは会社という組織に所属していた中でのこと。いざ経営者になってみると、目先のことばかりにとらわれ、どうやって時間を使えばいいのかわからなくなったことがありました」

それを乗り越えられたのは、飯田さんからのアドバイスがあったからだと井出さん。

「行き詰まっている私を見た飯田が、『井出さん、ちょっと病んでいない? もっとこっちの仕事に時間をさいたほうがいいよ』などと言ってくれました」

その一言で、客観的に自分の状況を把握できるようになり、マインドを切り替えられたそうです。

「最近は、手帳に自分の行動を書き出しています。そして、1週間に1度ぐらいですが、どんな仕事にどのぐらい時間を使ったかを振り返りながら、同時に今、優先すべきことは何か、それをいつやるかといった計画も立てるようにしています。それで、脳が整理されていくような気がします」

具体的な数字を提示して投資家を説得したり、登録していただくシェフを増やすために、料理の専門学校に営業に行ったり。「ビジネスの可能性がゼロではない限り、やり続けよう」と歩みを止めず、2018年5月、ようやくサービスがローンチ。

シェアリングサービスが日本全体で認知され始めた時期も重なり、「わが家の食卓が変わりました」「食の悩みが解決しました」など利用者からの評判も上々。シェフの登録数も順調に増え続けているといいます。

「まだまだ課題はたくさんありますが、時短や家事の効率化を主目的とした家庭料理ではなく、食の専門家がその家庭の悩みを聞きながら一緒に解決し、家族が笑顔で食卓を囲めるような家庭料理を提供していくことが、私たちの使命です。『料理は自分がやらなきゃ』じゃなくていい。『家族のためだからこそ、堂々と専門家に頼っていいんだ』という価値観も、広めていきたいですね」

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井出有希(いで ゆき)

1978年、高知県生まれ。2000年、東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。9年にわたり主に自動車・自動車部品セクターの株式アナリストとして働く。09年アライアンス・バーンスタイン、12年ボストンコンサルティング グループを経て、17年シェアダイン創業。1男1女の母。

編集:株式会社エアリーライム ライター:長島ともこ

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