【シリーズ】プロフェッショナルのパフォーマンス論Vol.1 為末大さん 第1回

長所を生かして、パフォーマンスを上げる(全3回)

 

第1回 現役引退以降のトライ&エラーで見つけたもの 

2001年の世界陸上選手権400mハードルで銅メダルを獲得し、日本に初めて世界大会スプリント種目のメダルを持ち帰った為末大さん。2012年に現役を引退した後は、著書の執筆、会社経営など、幅広く活躍されています。為末さん独自の視点と考察による「自分らしく、パフォーマンスを上げる方法」をお聞きしました。1回目は自分の強みを生かすためにすべきこと、2回目は脳のパフォーマンスを上げる方法について、3回目は自分らしさの発見、また為末さんのライフワークについてお伝えします。

 

会社の形にこだわらない新しい取り組み

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渋谷のオフィスビルのワンフロア、大きなテーブルがランダムに並ぶ仕切りのないオープンな空間。元陸上選手、為末大さんが代表を務める株式会社Deportare Partnersのオフィスにお邪魔しました。

「いろいろなことに手を出していると見られていますが、僕の仕事の柱はシンプルに3つなんです」と笑う為末さん。「まず1つは、個人の発信や活動。2つ目が、アジアの選手のネットワークを作って選手をサポートする一般社団法人アスリートソサエティの運営。3つ目がまさにこのスペースなのですが、スポーツ×テクノロジーに関するプロジェクトを行うインキュベーションオフィス(起業や創業をするために活動する入居者を支援する施設)、Deportare Partnersの代表を務めています」

現在Deportare Partnersには7社が集まっていて、為末さんは、新しいプロジェクトやスタートアップ企業のプロデューサー的な存在です。

「スポーツと人をテーマにしたプロジェクトが集まっていて、その支援をしています。それぞれのプロジェクトに社長なり、主体になっている人がいて、僕はあくまでアドバイザーのような関わりです。さまざまなプロジェクトが立ち上がっていくなかで、そこに僕の名前や顔が出たりするので、いろんなことをやってるなと見えてしまうわけです(笑)」

長所だった勝負強さも、社会ではリスクを計れない短所に

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 現役を引退して7年、着々と新しい道を歩んでいるように見える為末さんですが、これまでさまざまな試行錯誤があったようです。

「引退して気づいたのは、選手時代には褒められていたことが、引退した途端に短所になってしまうということ。たとえば、僕はわりに勝負強い方ですが、一般的に勝負強い選手はリスクに対しての感度が低い、つまり失敗したときに“人に何と言われるか”ということにある意味鈍感だから、怯えないので強いんですね。でも社会に出ると、それは“ちゃんとリスクを計れない“という短所になってしまう。危ないことを、たいした精査もなくいきなりやっちゃう性質なんですよ(笑)。トライ&エラーは陸上競技の世界では当たり前のことですが、会社としてやるとなるとそんなに頻繁にやり直しはききません」

勝負強さとリスクの見積もり、その両方をコントロールすることは難しいのかもしれません。為末さんは、その弱点をひとりで埋めるのではなく、誰かにサポートしてもらうという形を考えました。

「短所であっても、それは自分らしさであり、自分はそういう癖があるんだと自覚することが大事なんですね。僕の場合、こういうことをやりたいというビジョンがまず浮かびます。なにごとも最初の入り口はやっぱり直感が重要だと思うんです。ただ、それが本当に実現できるのかどうか検証するチームが必要なんですね。その部分をみんなにやってもらう。それで止まったものはダメなプランとして、途中で変更したり、考え直したりします。自分が何かを決定しなきゃいけないときには経験豊かで客観的な人に意見をもらうとか、細かく詰めるところを他の誰かにやってもらうとか、ある種の共同作業の形を取って進めることにしました」

自分の「トリセツ」を周りのみんなに伝える

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(写真:関 健作)

ビジネスというチームプレイの中で、為末さんが実践していることを教えてくださいました。

「1つは、最初に自分の説明書、いわば“トリセツ”みたいなものを紹介するんです。こういう特性があって、これはできます、みたいな。採用面接の自己アピールみたいなものですね」

為末さんの「トリセツ」、たいへん興味深いところです。どのような感じなのでしょうか?

「プロジェクトをきっちり進めていくことはできません。ただ言語化は得意です。コミュニケーションが得意なので、何かと何かをつなぐことはできます。なのでプロジェクトの中では、時々頼りにする相手としては適していますが、僕にボールを預けず、あくまでも自分主体で進めてほしい。こちらがボールを持つと、進み方にムラが出るので、やりにくくなるし、ストレスがたまるかもしれません。などと、あらかじめ伝えるんです。そうすると過剰な期待や、行き違いなどの問題は減ると思いますね」

自分の強みがある領域はなにか、どんな癖があるか、弱点はなにか、よく理解したうえでのコミュニケーション。簡単そうで難しいことかもしれません。

「最初は、きっちりしたビジネスモデル作って、経営者としてやっていこうと思っていたんですよ。でも、自分の特性を考えると、ちょっと難しい。言語化は得意だけれど、ロジカルに積み上げていくことは苦手だし。雑多にいろいろなコトが動いているところで管理人をしながら、“これとこれをくっつけて”みたいな、価値を見つけ出すのが自分の仕事なんじゃないかと気づいて…。1社でやっていたのを、現在のようなシェアオフィス型にして、つなげていくスタイルに切り替えたんです。それぞれに主体となるプレイヤーがいて、僕がいる。コーチに近い存在かもしれませんね」

会社の形にとらわれず、自分を生かし、新しい仕事を生み出している為末さん。大切なのは「とことん自分を知ること」なのかもしれません。次回はそのコツを伺います。

 

為末 大(ためすえ だい)

プロフィール:1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初めてメダルを獲得。3度のオリンピックに出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2019年10月現在)。現在はSports×Technologyに関するプロジェクトを行う株式会社Deportare Partners(http://www.deportarepartners.tokyo/)の代表、アジアのアスリートの育成・ネットワークを構築する一般社団法人アスリートソサエティ(http://www.athletesociety.org/)の代表理事を務める。主な著書に、『走る哲学』(扶桑社、2012年)、『諦める力』(プレジデント社、2013年)など多数。

2019年10月に新刊となる初の絵本『生き抜くチカラ ボクがキミに伝えたい50のことば』(日本図書センター)発売。

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編集:株式会社エアリーライム ライター:菅野和子

写真:木村和敬

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【シリーズ】プロフェッショナルのパフォーマンス論 Vol.1 為末大さん 第2回

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